皿にもったパスタのいい匂いが食欲をそそる。

　 恭生とジェフリーは向かい合わせにテーブルにつくと、 早速フォークを手にとって食べ始めた。

　「うん、 美味い」

　 ただのレトルトなのになぜかとても美味しく感じる。

　 お腹がすいているからだろうか。

　「あれ？　恭生、 どうして醤油なんか…」

　 しばらく目の前の料理に熱中していたが、 ジェフリーが恭生の手元に目をやって驚いた顔をした。

　 恭生はサラダにつけるマヨネーズに醤油をかけていた。

　「マヨネーズだけだとなんかマヨネーズ臭いんだよ。 こうやって醤油たらすと美味いんだ」

　 そう言って恭生は胡瓜をそれにつける。

　「美味しい？」

　 口に消えていく胡瓜をじっと見ていたジェフリーが眉をひそめる。

　「ああ、 ………食べてみるか？」

　 じっと自分を見るジェフリーに、 恭生は笑いながらフォークに胡瓜を突き刺すとちょんと醤油入りマヨネーズを

付けてジェフリーの口元に差し出した。

　 ジェフリーは奇妙な顔をしながらパクンと差し出されたフォークを咥えた。

　 もぐもぐと口を動かして、 ひょいと眉をあげる。

　「な、 美味いだろう」

　 ジェフリーの表情に、 恭生はにこにこと笑った。

　 が、 何故かジェフリーはその後も黙ったままだった。

　 黙って恭生をじっと見ている。

　「ジェフリー？」

　 笑っていた恭生は、 その目に嫌な予感を覚えた。

　「……………いいなあ……可愛いエプロンをした恭生の手で手料理を食べさせてもらって………まさに新婚

そのものだね」

　「な……っ！」

　 うっとりとつぶやかれたジェフリーの爆弾発言に恭生はみるみる真っ赤になった。

　 そして自分が今もピンクのエプロンを身に付けていることにやっと気付く。

　 慌てて脱ぎ捨てる恭生の前でジェフリーがああ、 と残念そうな声を出す。

　 しかし恭生はその声を無視し、 ほとんど空になっていた自分の皿の中身を口にかきこむとがたんと席を立った。

　「ごちそうさまっ！」

　 そのまま汚れた食器を流しに運んでさっさと洗い出す。

　 その様子にジェフリーも苦笑しながら自分の食器を持ってくる。

　「恭生、 そんな照れなくても………」

　「うるさいっ！ 変態っ」

　 背後から笑い混じりに囁かれ、 恭生は背後の変態を睨みつけた。

　「ひどいなあ、 ただ俺は将来恭生と二人で暮らすようになったら毎日こんな風に食事をするのかなあって、

そう思っただけなのに」

　 その言葉にがしがしと皿を洗っていた恭生の手がぴたりと止まる。

　「将来？」

　「うん、 そう」

　 驚いたように振りかえった恭生にジェフリーが笑いかけた。

　「将来俺が働くようになって、 恭生も自立したら二人っきりでどこかに部屋を借りて住むんだ」

　 そう言いながら恭生の頬にちょんとキスする。

　 恭生は驚いたまま、 ジェフリーの手を振り解こうともしない。

　「恭生？」

　 呆然と自分を見る恭生にジェフリーが首をかしげた。

　「俺………俺、 そんな二人きりで暮らすなんてこと考えたこともなかった」

　「じゃあこれから考えて」

　 ずっと俺と一緒に暮らすんだ

　 優しく囁かれる言葉に恭生の目がかすかに揺れる。

　「恭生？」

　 返事をしない恋人にまさか嫌なのかとその顔を覗きこんだジェフリーは、 そこに紛れもない喜びの表情を

見つけた。

　照れくさそうに、 恥ずかしそうに頬を染めながらも確かに恭生は嬉しそうだった。

　「恭生………愛してるよ」

　 その姿にジェフリーの心に愛しさが溢れる。

　「………俺も…」

　 愛してる、 と小さく囁き返され、 たまらなくなったジェフリーは恋人の唇をその場で奪った。

　









　 その夜、 恭生の部屋にこもった二人は、 次の日恭生の両親が帰ってくるまで一歩も部屋の外に出ることは

なかった。

　 そして、 帰宅した気配に慌ててベッドを飛び出した二人のどこか乱れた服装は、 両親の首を大いに

かしげさせたのだった。

ＥＮＤ

１０万Ｈｉｔされたはなさまのリクエストです。　
　ラブラブな二人をということでしたが、 ラブラブというか、
あいも変わらずバカップルなもの……（汗）
はなさま、 遅くなって申し訳ありません………陳謝