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  「どうしてこうなるんだよ……。」

  恭生は目の前の光景に、 頭を抱えていた。

  目の前でジェフリーが楽しそうに部員達と談笑している。 咎める立場のはずの顧問までが一緒に

なってしゃべっている。




  部外者であるはずのジェフリーを合宿所の前で見つけた恭生は、 すぐさま家に帰るように言った。

  驚きのあまり怒ったような口調になる恭生に、 ジェフリーは涼しげな顔でとんでもないことを言った。

 「大丈夫、 俺も合宿に参加するんだ。 逸生が学校に頼んでくれた、 日本の高校生の部活を体験

してみたいからって。 先生も喜んでOKしてくれたよ、 アメリカのバスケが見れるって。」

 「なっ ……逸生兄さんの奴〜っ 家を出るときはそんなことひとっ言も俺に……わざとだな。」

  素知らぬ顔で自分を送り出した兄の姿を思い出す。

 「ほら、 ちゃんと泊まる準備もしてきたし。」

  ニコニコと笑って足元のバッグを指差すジェフリーに、 恭生はめまいを起こしそうだった。





 「恭生っ」

  思い出してため息をつく恭生に、 ジェフリーが人の輪の中から手を振った。

 「恭生、 ゲームだ。 コートに入って。」

 「ゲーム?」

 「先生や他の部員たちがアメリカのバスケ見てみたいってさ。 あいつ含めて試合形式でやるって。」

  首をかしげる恭生に、いつのまにか隣にいた知哉が言った。

 「お前、 いつの間に……。」

 「感じいい奴じゃん、 あいつ。 お前の話じゃなんか変な奴ってイメージあったけど。」

 「……見た目と外面いいから。」

 「でもあいつといる恭生、 なんかいつもと感じ違ってて面白いけど? 表情ころころ変わってずっと

雰囲気柔らかいし、 かわいい気はする。」

  ぶすっとつぶやく恭生の顔を覗きこんで知哉が笑う。

 「かわいいって……お前に言われたくない。」

  自分より下にある目のくりっとしたかわいらしい顔を見て、 恭生が言う。

  その言葉に知哉がむっとした。

 「どういう意味だよ。」

  その子犬みたいなかわいらしさから、 日ごろ皆からマスコット代わりにされることに反発している

知哉は、 恭生の言葉に即座に反応した。

 「ハイハイ、 そこまでお二人さん。 部長が呼んでるぜ、 早く来いって。 ほら、 おかんむり。」

  二人の間に割って入って山脇がコートを指差す。

  見ると部長が今にも怒鳴りそうな顔つきでこちらを見ていた。

  恭生と知哉は顔を見合すと、 コートの方へと駆け出していった。





 「つ、 つえ〜〜〜、 あいつ。」

  肩で息をしながら山脇がうなった。

  部長達3年とチームを組んで、 恭生達2年と対戦しているジェフリーは、 思った以上にバスケが

上手かった。

 「ちくしょう、 なんでこんなにバスケが出来るの黙ってたんだよっ」

  悔しそうに言う恭生に、 ジェフリーが笑って答える。

 「ハイスクールで少しやっていたからね。 それに学校外でもよく仲間とストリートで遊んでいたし。」

 「うへえ、 本場のストリートバスケ? くそ、 レベルが違うってか。」

  山脇がその場で仰向けに転がってしまう。

 「俺なんかまだまだ。 お遊び程度だよ。」

 「……日本人のレベルが低すぎるってことか。 まだまだ練習が足りないな。」

  部長がため息をついて言った。

 「もう一回っ このままじゃバスケ部の名折れだっ 悔しすぎるっ」

  座りこんでいた恭生が立ちあがって、 びしっとジェフリーを指差す。

  すっかり最初の戸惑いは忘れ去られていた。

  今の恭生はバスケで負けたという悔しい思いでいっぱいだった。

 「部長たちはどうでもいいけど、 お前に負けるのはなんか納得できない。」

 「……こら、 なんかドサクサにまぎれて聞き捨てならんことを。」

  恭生の言葉に部長がつぶやく。

  指指された本人は楽しそうに恭生にボールを放った。

 「じゃあマンツーマンだ。 俺からゴール奪えるか?」

 「やってやるっ」

  恭生はきっとジェフリーを睨むと、 ドリブルの体勢になった。

 「恭生も負けず嫌いだよなあ……。」

  目の前で繰り広げられるゲームに、 山脇が呆れたように言う。

 「元気だよねえ。」

  知哉も汗を吹きながら言った。

 「お前らは簡単にあきらめ過ぎだ。 少しは恭生の負けん気を見習え。」

  そんな二人の頭を部長がぽこんと殴った。

  そのとき、

 「恭生っ!」

  ジェフリーの叫び声に、 皆がはっと振り向いた。

  見ると、 ジェフリーの横に恭生が倒れこんでいる。

 「どうしたっ 何があったんだ?」

  部長が厳しい顔で即座に駆け寄る。

 「ディフェンスを避けようとして、 彼のひじが小須賀の頭を……。」

  先に恭生のところに駆け寄っていた2年部員が答えた。

 「とりあえずコートの外へ……。」

  言いかける部長の横からジェフリーが恭生をさっと抱き上げ、 体育館の外へと飛び出した。

 「おいっ どこへ?」

 「医務室だっ どこにある?」

  足早に体育館を出ながら、 ジェフリーが叫び返した。

 「正面校舎の右奥だけど……おいっ」

  慌てる部長達を尻目に、 ジェフリーは教えられた校舎へと急いだ。