「私に何かできますかっ!」

男性はちらりとこちらを見ると、にこりと笑った。
「ああ、ありがとう。 
じゃあ、まず119に電話してくれるか。救急車を呼んでくれ。
それから何か布を。傷口を縛るような」
「わかりましたっ!」


男性の指示通りに電話をし、布を探したりしているうちに
救急車が到着した。

男性は救急隊員に指示をしながら自分も救急車に乗り込んだ。
どうやらやはり医者のようだ。

彼らがてきぱきと動くのを見ながら、どうやら自分のできることはもうないと思いながら、
とりあえず、救急車を見送ろうとその場に立っていた。

と、

救急車に乗り込んでいた男性が自分を手招いている。
首を傾げながら近寄ると、
一枚の紙を手渡された。
「急いでいるようだったのに悪かったな。
ついでといっては何だが
もうすぐここに俺の約束していた相手がやってくる。
悪いがこれを渡してくれないか。
それから、そいつ、タクシーで来るはずだから
よかったらそのままその車に乗っていってくれ。
もちろん代金はこちらで払う」

「はい」

頷きながらその紙を受け取った。

「そいつ、藤見っていう奴だから。
聞かれたら瀬名生に頼まれたって言ってくれ」

頼んだぞ。
そう言うと、瀬名生はまた救急車の中へと戻っていった。
すぐに車は病院に向かって走り去った。




しばらくして、彼の言ったとおり、藤見がやってきた。
預かった紙を渡すと、彼はにっこり笑った。
「どうもありがとうございます。
どうぞ、この車を使ってください」

乗ってきたタクシーを指差される。







さて、どうしましょう。


ありがたく使わせていただいた そこまでしてもらうのは悪いので
丁重にお断りした








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