Spicy Bombe




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「う〜ん、こんなものか……」

 淳平は皿に盛り付けた料理を見て、首をひねった。

 何か、納得いかない。

 何かが足りないような気がする。

 皿の上にはいかにも子供が喜びそうな料理の数々が並んでいた。

 それを眺めながら、淳平はう〜ん、と唸る。

「……料理はこれでいいよな。好き嫌いの激しい子供だって喜びそうなもの

ばっかりだよな。……やっぱりハンバーグよりカレーの方がよかったか?」

 ホカホカと湯気を立てているのは、おいしそうなソースのかかった

ハンバーグだ。付け合せにはポテトサラダ。それに真っ赤なケチャップの

スパゲッティ。

 そして、エビフライだって用意した。

 これも子供の大好きなものだ。

「あ、そうか……っ」

 淳平は一つ足りないものに気づいた。

 そしてフライパンを取り出すと、卵をコンと割り入れる。

「ハンバーグにはやっぱ目玉焼きがのっていないとな」

 これで完璧、と頷く。

 が、出来た目玉焼きハンバーグの上にのせようとして、あることを思いついた。

「………面白いかも」

 淳平はにやりと笑うと、もう一度フライパンをコンロにかけた。

 そして帰り際に貢からもらった包みを開けた。








 キッチンから漂ういい匂いに、杵築はふと顔を上げた。

 どうやら今日は洋食のようだ。

「見てろよ、今日こそは全部食わせてやるからな」

 いつものように食材を抱えてやってきた淳平は、いつもと同じセリフと共にキッチンに消えた。

 一体今日は何を作っているのやら。

 杵築はいつのまにか耳慣れたキッチンからの物音を聞きながら、口元に笑みを浮かべた。








「メシだぞ」

 少しして、淳平がリビングにいる杵築に声をかけてきた。

「今日こそは宣言どおり、本当に食えるものを作ったんだろうな」

「うるせえよっ」

 からかうような言葉に、淳平はむっとした表情をして見せた。

 が、その顔はすぐに別のものに変わった。

「?」

「今日はほんとにとっておきのメニューだぜ。泣いて喜べ」

 にやにやと何かを企むような笑みを浮かべている。

「なんだ、それは」

 いつもとどこか違う様子に、杵築は眉を顰めた。

「………何を企んでいる?」

「べーつに」

 早くしないとメシ、冷めちまうぜ。

 キッチンへと促す淳平に杵築は不審な眼差しを送ったが、何も言わずにソファを立ち上がった。

 しかしキッチンに入った杵築はその場で思わず立ち止まってしまった。

 テーブルに並んだ料理を見て目を見開いて絶句する。



 そこには、ハンバーグ、エビフライ、スパゲッティ、ポテトサラダ、そしてチキンライスを

盛り付けた皿があった。

 ご丁寧に、綺麗に盛ったチキンライスにはアメリカの旗まで立ててある。

 そして、そばに置かれた別の皿にはプリンとクッキーが……。





 小さい子供なら喜んで飛びつくその料理。

 まぎれもなく、それはお子様ランチだった。