夜の扉を開いて

 

17

 

 

 

    伸ばされた手で頬を覆われる。

  瀬名生が行為を再開してくれるのだと藤見はほっと息をついた。

  しかし、 瀬名生はベッドサイドに立ったままだった。

  早くと疼く体をもてあまし、藤見はそっと瀬名生の顔を見上げた。

  その淫蕩に潤む瞳を見て瀬名生が何かを企むような目つきをする。

  頬に覆う手が顎に下がる。

  そのまま親指で唇を軽く撫でられた。

 「………言葉ではなく態度で示して欲しいな」

  その言葉と自分の唇に当てられた指に、 藤見は瀬名生が何を促がしているのか悟る。

  信じられないという目で瀬名生を見る。

  その目の奥には怯えが浮かんでいた。

 「さあ、 ちゃんと体でお願いしてみろよ………でないとずっとこのままだ」

  脅すような言葉に指を押し当てられた藤見の唇が震える。

  すぐ目の前にはこちらを向いて立ったままの瀬名生の下半身がある。

  その一物は固くそそり勃ったまま力を失っていない。

  さあ、と促がすように顎をつかまれた指に力がこもる。

  こくりと唾を飲みこむと、 藤見は目の前の凶器に震える手を伸ばした。

  触れた瞬間、 その熱さに手を引っ込めてしまいそうになった。

  怖気づきそうになりながら両手で包みこむようにして捧げ持つ。

  瀬名生が顎から手を離し、 藤見の後頭部を支える。

  それに促がされるように、 ゆっくりと顔を近づけた。

  ぴちゃり……

  先端を舌でそっと舐める。

  先から順に少しづつ舐めていると、 瀬名生の体が張り詰めるのがわかった。

 「………口に咥えるんだ」

  どこかかすれた声で言う。

  藤見はおとなしくその言葉に従った。

  口を開いて屹立したものを飲みこむ。

  大きすぎて全て飲みこむことは出来ず、 半分ほど口に入れて苦しそうに顔をゆがめた。

  太いものを咥えた口が大きく開いている。

  瀬名生は後肛とはまた違った感触に、 思わずうめき声をあげそうになった。

  怯えるように動く舌が肉棒を知らず愛撫している。

  喉の奥が息苦しさにひくひくと痙攣するように動いているのがわかる。

  あまりの心地よさに藤見の髪の毛を掴む手に力がこもる。

  そのまま乱暴に揺さぶってやりたい気持ちを必死に抑える。

  藤見は苦しそうにしながらも、 おぼつかない動きで少しづつ顔を動かす。

  初めて口にする瀬名生のものは、 藤見に思ったほどの嫌悪を感じさせなかった。

  それどころか、 舌をうごめかすたびに口の中でぴくりと跳ねるように動くものにだんだんと

自分の体も昂揚していく。

  いつのまにか夢中になって舌を動かしていた。

  大きく張り出した亀頭の周りを舌で愛撫し、 喉の奥深くに飲み込む。

  支える指で根元から扱きながら、 肉棒全体を舐め上げる。

  軽く甘噛みすると、 頭上で瀬名生がうっとうめくのが聞こえた。

  みるみる内に口の中のものがその容量を増していく。

  それを感じて藤見の体も疼きを増す。

  後肛が中を苛むものを欲してひくひくと開閉を繰り返すのがわかる。

  どうにもたまらなくなって口に彼のものを咥えたまま瀬名生を見上げた。

  その涙に潤んだ目に瀬名生の内の獣が暴走する。

  そのまま暴発しそうなほど固く屹立したものを藤見の口から引き抜くと、 彼の体を押し倒し

乱暴に後ろに突き立てた。

 「あああっ!」

  衝撃に藤見の体がのけぞる。

  しかし彼の口から迸ったのは悲鳴ではなく嬌声だった。

  やっと与えられたものに内部が貪欲に絡みつく。

  その、 彼を締め付け蠕動する内部のあまりの心地よさに、 瀬名生は我を忘れてしまった。

  ただがむしゃらに腰を突き出し、 中を突き上げることにのみ集中する。

 「あっ…あっ…あっ……」

  藤見がその激しさについていけなくなって、 瀬名生の体に絡めていた手足を投げ出す。

  全身を駆け巡る快感にただ翻弄されるだけだった。

  体全体を使って激しく攻め立てられ、 がくがくと体が揺れる。

  快感に霞んだ目に自分の上で動く瀬名生の汗の滴る顔が映った。

  その表情はどこか苦しそうにゆがんでいた。

  瀬名生の額を流れる汗が藤見の顔に滴り落ちる。

  ふいに瀬名生の顔がのけぞった。

  と同時に、 藤見は自分の内部に流れこんでくる熱い奔流を感じた。

  一度、 二度とそれは襲ってくる。

  その激しい迸りに引き摺られるように藤見も快感の証を吹き上げていた。









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