夜の扉を開いて

 

16

 

 

 

    深い突き上げに藤見は身をのけぞらせた。

  衝撃に思わず口から嬌声が漏れる。

 「あ…ああ……っ」

  体の奥深くに瀬名生の楔が入り込んでいる。

  それが中を縦横無尽に暴れまわる。

  内部を激しく擦られ、 たまらなくなった藤見は首を左右に振り涙を振りこぼす。

  快感で指の先まで痺れてしまいそうだ。

  固く立ちあがった藤見の肉棒もその先端から快楽の雫をたらしている。

  それが瀬名生の腹に当たり、 くちゅくちゅと湿った音をたてている。

 「ずいぶんと気持ち良さそうだな」

  喘ぐ藤見をからかうように瀬名生はその快感を示している肉棒を掴んだ。

 「あああっ!」

  途端に走った鋭い快感に藤見の背がしなる。

  瀬名生は腰を突き上げながら、 手に捕らえた快楽の象徴を扱き上げる。

  根元から擦り上げるようにして先端を親指で弄る。

  先端に爪を立てられ、 抉るように引っかかれて藤見の喉から悲鳴が漏れる。

 「あ…あ……っ い、や……もう……っ」

 「だめだ。 まだだよ、 先生」

  一気に絶頂に登りつめようとするが、 瀬名生が分身の根元をぎゅっと強く掴んで阻止する。

  そして入り込んでいた自分の一物を引き抜いてしまった。

 「あ・・…ど、して………」

  絶頂をさえぎられ、 中を満たしていたものまで奪われた藤見はその空虚感に身を

よじらせる。

  中に欲しかった。

  瀬名生の退いたそこはぽっかりと穴が開いたようだった。

  先ほどまで自分を満たしていたものが欲しい。

  熱く固い感触を求めて自分の内部がひくひくとうごめいているのがわかる。

  なのに瀬名生はそんな藤見をじっと見下ろしたまま動こうとしない。

  焦れて藤見が腰を押し付けてきても、 ただその痴態を眺めているだけだった。

  欲しくて欲しくてたまらない。

  ましてや達しようとしていたところをさえぎられた藤見の体は、 最後の快楽を求めて

さっきまでの快感を狂おしいほどに欲している。

 「いや……っ 瀬名生……せんせい・・・・・・っ」

  じっと自分を見つめるだけの男に藤見が涙声で訴える。

  と、 やっと瀬名生が動いた。

  が、 それは藤見の願っていたものではなかった。

  瀬名生はそのままベッドから下りようとしたのだ。

 「先生……っ!」

  信じられない行動に藤見が力の入らない体を震わせながら男を引きとめようとする。

  どうしてこんな状態で放って置かれるのか。

  この疼いて仕方のない体をどうにかしてほしかった。

  その熱い体で体の火照りを静めて欲しかった。

  もどかしさに涙を浮かべてじっと自分を見つめる藤見に、 瀬名生がひょいと眉をあげた。

 「俺に抱かれるのは嫌なんだろう。 なにせ先生は俺が大嫌いらしいからな」

 「……っ」

  瀬名生の言葉に藤見は返す言葉がない。

  ただ呆然と瀬名生を見るだけだった。

 「やっぱり無理強いするのは良くないからな。 今夜はこれで終わりということにしよう」

 「そんな……っ」

  中途半端に放って置かれると知った藤見は絶望の声を上げた。

 「お願い……っ」

  おもわず懇願じみた声が出る。

 「お願い……何だ?」

  その言葉を瀬名生が聞きとがめる。

 「言ってみろよ。 先生。 何をお願いしたいんだ?」

 「あ………」

  からかうように促がす瀬名生に、 藤見は言葉が続かない。

  体は限界を超えている。

  早くどうにかしてもらわないと気が狂いそうだ。

  しかしそれを瀬名生にあからさまに告げるのは藤見にはどうしても出来なかった。

  言葉が喉で消える。

 「どうして欲しいんだ? 言ってみろよ、先生」

  そんな藤見の様子を知りながら、 瀬名生はちゃんと言葉にしろと言う。

 「………」

 「言えないんならこれで終わりだな」

 「!」

  黙ったままの藤見に、 瀬名生が背を向けて部屋を出て行こうとする。

 「ま、待って……っ」

  泣きそうな声で藤見が引きとめる。

  このまま出て行かれたら、 この状態で放っておかれるのは地獄だった。

  藤見の声に瀬名生がまた側に戻ってきた。

  半分泣いてしまっている顔を覗きこんで、 それでも問いかける。

 「どうして欲しい?」

 「……だ、 抱いて…………」

  震える声で小さく訴える。

 「……私を、 抱いてください………」

  その言葉に、 瀬名生は口元にゆがんだ笑みを浮かべた。









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