楽園の瑕

 

 

 

 

 

  いつまでも響くサラーラの泣き声に、 ファビアスはじっとその場に立ち尽くしていた。

  噛み締めた唇からは血がにじみ出ている。

  もう我慢できない。

  今まで堪えてきた怒りが堰を切って溢れ出す。

  これまでも国王の振るまいは目にあまるものがあった。

  国の統治を放りだし、 朝から晩まで女と酒に溺れ、 家臣の前でもその醜態を恥じる

ことなくさらけ出す。

  家臣や国民の中にもそんな国王に対する不満が日に日に増していっているのを

感じていた。

  それでも国王だと、 自分の父親だと必死に我慢を重ねてきた。

  だが、 サラーラを腕に抱いた国王の姿を見た瞬間に、 それまでの我慢が吹き飛んだ。

  嫌がるサラーラの体を国王は楽しそうに撫でまわしていた。

  守りたい、 と初めて心の底から思った存在だった。

  その彼を欲望だけで汚そうとする国王が許せなかった。

 「ファビアス様……」

  無言で国王の去った方向を睨みつけるファビアスの様子に不穏なものを感じ取ったのか、

ヴァルクが小さな声で呼びかける。

  ヴァルクの顔を見たファビアスの目には決意の色が浮かんでいた。

  幼い頃からずっと彼の側に仕えてきた将軍は、 すぐにその決意を読み取る。

 「……家臣の中で王に不満を持つ者からすでに任意は得ております。」

 「どれほどだ?」

 「ここにいる重臣、 将軍達のほとんどが……」

 「そうか……」

  ファビアスの口に皮肉気にゆがめられた。









 「いやあっ はな……して…えっ」

  国王に抱きかかえられたまま、 王の寝室へと運び込まれたサラーラは、 乱暴に

ベッドの上に放り落とされると、 上からのしかかってきた巨体に体を押さえつけられた。

  逃げようともがいても、 重い体は彼の細い腕ではびくともしない。

 「やあ……あ…うっ、うっ」

 「そんなに嫌がるでない。 そら、 今にいい気持ちにしてやるぞ。」

  国王はそう囁きながらサラーラの体から衣服を奪いとっていった。

 「ふむ。 胸は平らなのだな。」

 「や……っ 何を…っ」

  全裸にされてサラーラの目に困惑と怯えの色が浮かぶ。

  生まれたときからずっと孤立して育ってきたサラーラは、 性に関する知識を

ほとんど持っていなかった。

  そのため、 今自分がどのような立場に置かれているのかを知る由もなかった。

  ただ、 あらわになった肌を舐めるように見る国王の目に、 良からぬことが起こる

のだという漠然とした予感に震えるだけだった。

 「本当にどこもかしこも真っ白だのう。 ほれ、 こんな所も……」

 「っ! いやっ!」

  さわり、と下腹を撫でられ、 サラーラの背筋をぞっとした悪寒が走る。

 「怯える顔もまた可愛いのう。 その可愛い唇はどんな味がする?」

 「っ! んん〜〜っ!!」

  ねっとりと唇を塞がれる。

  呆然としている間に、 薄く開いた唇からうねうねと生ぬるいものが入ってきた。

  それはサラーラの口腔中を好き勝手に動き回る。

 「んん……っ!」

  あまりの気持ち悪さにサラーラの目から涙がこぼれた。

  必死で抗うが、 巨体に押しつぶされた体は弱々しくもがくだけだった。

  そのうち、 思う存分口腔を味わった口がサラーラの唇を離れ喉から胸へと下りていく。

 「い、 やあ……えっ、えっ……えっ」

  胸を這いまわる舌が気持ち悪い。

  どうして自分がこんな目にあっているのかがわからない。

 「どおれ、 半陰陽のあそこを見せてもらうとしようか。」

 「っ! いやっ やめて……っ そんなとこっ」

  いきなり両足を大きく広げられ、 国王の目の前に来るように持ち上げられる。

  腰の下にクッションを押し込められて身動きがとれなくなる。

 「ほお……これは見事なものだ。 これが半陰陽か。」

  サラーラの秘所を見た国王の口から感嘆の声が上がる。

  太い指がサラーラの小さな分身から双珠をたどり、 その奥にある秘められた深み

へと向けられる。

  それはちょうど分身の根元、 双珠のすぐ奥にひっそりと存在していた。

 「っ!! な、何……っ?」

  おもむろにそこに指を差しこまれ、 サラーラの身体がびくんと跳ね上がった。

  身体を痛みが突き抜けた。

 「いた…・・っ 痛い…っ! いやっ」

 「よしよし、 すぐにいい気持ちになる。 ほれほれ。」

 「いやあっ 痛いっ」

  潜り込んだ異物が体の中を掻き回すたびに痛みが体を突き抜ける。

  我慢できず泣きじゃくり出す。

  王はそんなサラーラに我慢できなくなったのか、 慌てたように衣服を脱ぎ捨てると

自分の猛り勃った一物をあらわにした。

 「今、 そなたを女にしてやるからな。」

 「ひ……っ! いやあっ 来ないで……っ」

  初めて見る赤黒くぬめり光った巨大な肉棒に、 サラーラは本能的に恐怖を感じて

悲鳴を上げた。

  少しでも王から身を遠ざけようともがくサラーラの両足を持ち上げ、 先ほど確認

した深みに自分の一物を押しあてようとした。

 「いやああっ」

  サラーラは近づいてくる恐ろしいものに泣き叫ぶ。

  男が自分に何をしようとしているのかはわからなかった。

  だが、 それを受け入れてしまうととり返しのつかないことになる。

  それだけはうっすらと理解する。

  だから必死にもがいた。

 「おとなしくせよと言っておるに……」

  業をにやした王が無理矢理中に押し入ろうとした。

  そのとき、

  突然、 寝室の扉が荒々しく開いた。

  驚いた国王がそのままの状態で顔を振り向く。

 「一体何事だっ ここは国王の寝室だぞっ!」

  どやどやと入ってきた兵士に、 国王は怒りで顔を真っ赤にした。

 「父上……いや、 前国王と呼ばせていただきます。 その者から離れてください。」

  兵士の中から姿を現わしたのはファビアスだった。









                  
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