楽園の瑕

 

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    サラーラを抱えたファビアスは寝室のベッドに彼を放り投げると、 そのまままたじたばたと

抗いはじめるサラーラを自分の体で押さえつけた。

 「サラーラ………」

 「いやっ 離してっ」

  両手でファビアスの体を押しのけようとするが、 頑健な体はびくともしない。

  動かない体を何とかどかそうと泣きそうな顔で必死に腕に力をこめるサラーラが愛しくて、

ファビアスは額に口付けた。

 「サラーラ、 モルディアに嫉妬したのか」

  初めてサラーラの心の内を知ったファビアスは嬉しくて仕方がなかった。

  ずっと自分の片思いだと思っていた。

  何も知らないサラーラを無理矢理自分のものにしたようなものだった。

  サラーラが心を開く唯一の人間である乳母を、 いくらサラーラを救うためとはいえ、 その手で

殺してしまった。

  嫌がるサラーラを強引に自分の妻にした。

  体は完全に自分のものにしたと思っていた。

  夜毎自分の下で嬌声を上げるサラーラの体は、 すでにファビアスの思うままだった。

  快楽を求めて素直に彼に体を開く。

  しかし、 強引に妻とした後滅多に笑わなくなったサラーラに、 その心まで自分に開かれる

ようになるにはまだまだ時間がかかると思っていた。

  一度開かれかけた心は、 あの忌まわしい出来事の後、 また固く閉じられてしまった。

  失った信頼を取り戻し、 自分を愛するようにするのはまだまだ遠いことだと。

  それが、 すでにサラーラは自分に好意を持ってくれていたのだ。

  どんなにかすかな感情でも、 小さなものでもかまわなかった。

  サラーラ自身、 自分の気持ちを自覚していないことも気にしなかった。

  これから少しづつその感情を育てていけばいい、そう思った。

 「サラーラ」

 「いや、 いや………」

  額や頬に口付けるファビアスを拒否するように首を振り続けるサラーラを愛しさのこもった目で

見つめる。

 「サラーラ、 愛してる。 愛してる」

 「いや、 触らないで……っ」

  拒否の言葉しか出てこない唇に口付けようとしたファビアスを、 サラーラは顔を背けることに

よって避ける。

  キスを拒否されたファビアスは、 すっと目を細めた。

  いくら愛しくても我慢できないことはある。

 「………サラーラ、 俺を拒むな」

  片手でサラーラの顎を掴むと、 強引に唇を奪う。

 「ん……っんんん……っ!」

  ばたばたと手足をばたつかせて拒絶の意を表すが、 ファビアスは唇を離そうとしなかった。

  そのうち息が苦しくなったサラーラが喘ぐように唇をかすかに開いた。

  ファビアスがすかさず舌を差し入れる。

  口内を探られ舌を甘噛みされ、 愛撫に慣らされたサラーラの体が次第に力を失っていく。

  沸き起こってくる快感に抗えなくなる。

  ファビアスの手によって快楽に弱い体にされたサラーラは、 彼の手に逆らえない。

 「は…あ……」

  気が遠くなりそうなほど口内を探られ続けたサラーラは、ようやく唇を解放されて甘い吐息を

もらした。

 「いいか、 サラーラ。 俺を拒むことは許さない。 どんな時もだ。 お前は俺のものだ。 この体も

この白い肌も赤い瞳も唇も何もかも全て。 二度と俺を拒むな。 いや、 拒めないようにしてやる」

 「あ……」

  言うや、 ファビアスはサラーラのまとっていた衣服を次々と剥ぎ取っていった。

  見る間に白い裸体があらわになる。

 「ここも、 ここもここも全て俺のものだ」

  言いながら白い胸から腹、 サラーラの小さな男の分身へと手を滑らせていく。

 「神に愛でられた者………寵愛を受けた体……だが今は俺のものだ。 俺だけのものだ」

 「あ…ああ……」

  分身を擦り上げられ、 サラーラがあえかな吐息を漏らす。

  腰の辺りからじんわりとした快感が沸き起こる。

  見る間に勃ち上がってくるものに、 ファビアスが満足そうに笑む。

 「気持ちいいか? サラーラ」

 「あ………」

  こくこくと頷くサラーラの目にはもう先ほどの拒絶の色はなかった。

  すでに快楽に落ちかけている。

  ファビアスは片手で分身を愛撫しながら、 唇をその白い胸に落とした。

  立ち上がりかけているピンク色の尖りに舌をはわす。

  きゅっと歯でしごくように噛むと、 サラーラの背中がびくんと跳ねた。

  ファビアスが身を起こすと、 サラーラはいやいやと手を差し伸べてくる。

 「ファビアス様……もっと……」

  その言葉にファビアスは笑みを浮かべながら、 その白い体に覆い被さっていった。









                  
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