楽園の瑕

 

35

 

 

 

  「あ……っ」

  サラーラがファビアスの膝の上で身を反らした。

 「イイか?」

  ファビアスは目の前に突き出される胸の飾りを口に含みながら腰を突き上げた。

  椅子に座るファビアスの上でサラーラの体が揺れる。

  その体の奥にはファビアスの欲望が納められている。 

  いつもと同じように二人だけで夕食を取っていたはずだった。

  ファビアスの膝の上で彼の手によって食物を口に運ばれる。

  それがいつのまにか前戯へと変わり、 気がつけば座ったファビアスにまたがるように

して貫かれていた。

  ファビアスが掴んだ腰を揺さぶるたびにそれがサラーラが感じてたまらない場所にあたり、

サラーラの口から嬌声を上げさせた。

 「こちらの方もだいぶ慣れたな。」

  ファビアスがサラーラの秘められた場所に挿れた自分のもので中を掻き回す。

 「あああ……っ」

  サラーラは頬を上気させ快感の吐息を漏らしながらファビアスの首にしがみついた。

  感じて感じて仕方がなかった。

  サラーラの頬を快感の涙が零れる。

 「ファビアス様……ファビアス様……っ」

  知らず腰が揺らめく。

 「よしよし。 ここも可愛がって欲しいか?」

  ファビアスは手をサラーラの背後に回すと、 くいっと後孔に指を差し入れた。

 「ああっ!」

  途端にサラーラの口から嬌声が迸った。

  そのまま中深く潜り込んできた指に中を弄られ、 嬌声が止まらなくなる。

  前と後ろを同時に貫かれ、 内部を擦り上げられた。

  気が狂うほどの快感に翻弄される。

 「ああっ いやっ あっ…あ…い、 イイっ い……っ」

 「サラーラ。 気持ちイイか? どこがイイ?」

  ファビアスの声にがくがくと首を振りながら、 涙を振りこぼす。

  あまりの快感にどうにかなりそうだった。

  サラーラを妃の座に据えたファビアスは、 日ごとその寵愛を深めていく。

  毎夜飽くことなくその体を支配した。

  何度も何度も愛情を注ぎ続ける。

  サラーラがファビアスの手に怯えて嫌がったのは数日間だけだった。

  ファビアスによって開かれていた体は快楽に弱かった。

  その上新たに征服された場所がまたサラーラに新しい快感をもたらした。

  ファビアスに責められるとどうしようもなく、 快感を求めて泣いて彼のものを

欲しがった。

  そのときにはもう頭の中からは一切のことが消え去っていた。

  ただファビアスに抱かれることだけが全てになった。

  彼の胸の中で目覚め、 彼の腕の中で眠りにつく毎日。

  ファビアスは少しでも時間があると、 サラーラの元へとやって来る。

  そして、 愛の言葉を囁きながらその腕の中に優しく抱き寄せた。

  昼間、 一人で寂しく過ごせば過ごすほどファビアスの存在が大きくなっていく。

  どんなに彼の仕打ちが怖くても、 乳母の死がサラーラの心を傷つけていても、

ファビアスの腕の中に抱かれるとどうしようもなく乱れてしまった。

  犬のクルシュ以外、 何もかも失ってしまったサラーラにとって、 ファビアスだけが

たった一つの確かなものだった。

  自分の体が普通とは違うのだと知ってからは、 自分の存在すら不確かなもの

に思える。

  ファビアスが側にいないと、 不安に押しつぶされそうになる。

  ファビアスの膝の上で下から激しく突き上げられながら、 サラーラは目の前の

恐ろしくて、 それでいて自分が安心できるたった一つの存在にぎゅっとしがみついた。









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