楽園の瑕

 

31

 

 

 

   「何……?」 

  サラーラは今までとは違う感触に怯えた声を上げた。

  たった一度そこに触れられたおぞましい記憶を思い出す。

  前王が乱暴にそこに指を押し入れたのだ。

  その時の痛みと気持ちの悪さが甦る。

 「い、 や……そこはいや……」

 「ここは嫌か? そうか……」 

  サラーラの弱々しい拒絶にファビアスは口元をゆがめた。

  ぐいっと中に指を突き入れる。

 「ひ……っ!」

  サラーラが恐怖に身を強張らせた。

 「……ここを奪うのは、 お前が俺に心を開いて正式に妃にしてからと決めていた。

お前を俺の妻にして、 それからだと。 だが、 そんなことはもうどうでもいい。 お前が

俺から逃げられないように今すぐ全て俺のものにする。」

  ファビアスの言葉に、 サラーラの目に戸惑いが浮かんだ。

  ファビアスの言葉が理解できない。

 「何故………どうして僕が、 ファビアス様の妻に……? だって僕は男…………」

 「………知らないのか?」

  戸惑うサラーラにファビアスは皮肉な笑みを浮かべた。

  サラーラの秘められた部分に差し入れた指をゆっくりと動かしながら、 その耳元に

囁いた。

 「……女には後ろとは別にもう一つ穴がある。 子を産むためのな。 ……それが

ここ、だ。 男にはこのようなものはない。」

  容易に理解できない。

  サラーラの眉がひそめられる。

  それを見たファビアスがさらに言葉を繋ぐ。

 「お前はこの男の部分と、 この女の部分を両方生まれながらその体に備えている。

すなわち、 お前は男であり女でもあるんだ。 ……皆はそのような者を半陰陽……または

両性具有と呼んでいる。」

  半陰陽という言葉にサラーラは目を見開いた。

  その言葉なら聞いたことがあった。

  この城に入ったときに、 周りの人達がひそひそと話していた。

  前王が閨で自分の下肢を見ながらそう言っていたことも思い出す。

  そして、 前王がサラーラの女の部分に自分のものを突きつけようとしながら言った言葉も。

 ” 女にしてやる”

  あの男はそう言ったのだ。

  その言葉の意味をようやくサラーラは悟った。

 「そんな………」

  初めて知った自分の体の秘密に衝撃を受ける。

 「だから、 お前は俺の妻になる事が出来るんだ。 そして子を産むこともな。」

  ファビアスがさらに信じられないことを言った。

 「子……子供?」

  サラーラはショックのあまり呆然としながらつぶやく。

 「そうだ。 この、 女の部分に俺の男を入れてやる。 そして今までのように中で子種を

たっぷりと出してやる……そうすればお前は子を宿す。」

 「!」

  サラーラの顔が今度こそ衝撃に真っ青になった。

  やっと、今までファビアスが自分にしてきた行為の意味を知ったのだ。

 「……い、 いや……いや……っ」

  サラーラは弱々しく首を振りながら、 ファビアスから逃れようとした。

  シーツの上を逃げようと身をよじらせる。

  だが、 サラーラの中に入っていた指がその時ぐりっと動いた。

 「あうっ!」

  瞬間、 背筋を走ったものにサラーラは息を飲んだ。

 「感じたか?」

  ファビアスはサラーラを見下ろしながら冷たく笑った。









                  
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