楽園の瑕

 

18

 

 

 

    ファビアスは毎晩サラーラの元に訪れては、 その無垢な体を開いていった。

  何も知らない体は従順に男の手を受け入れていく。

  一度快感を覚え始めると、 後は早かった。

  サラーラはその行為の意味を知らないまま、 快楽のみを覚えていった。

  意味を知らないゆえに、 ただ素直にファビアスに抱かれることに喜びを感じるようになった。

  始めはあれほど恐怖していた行為なのに、 今はファビアスの訪れる夜が待ち遠しい。

  彼の暖かい腕の中で抱きしめられると安心した。

  ファビアスはいつもサラーラに優しく接した。

  優しく抱きしめ、 愛情のこもった口付けを送る。

  そして、 激しいほどの情熱でサラーラを翻弄した。

  サラーラはいつのまにか、 そんなファビアスを受け入れ始めていた。

  今までサラーラはこんなに溢れるほどの愛情を注がれたことがなかった。

  父である王も、 母である王妃も、 どこか自分に一歩引いた態度をとっていた。

  城の奥深くにひっそりと暮らす自分の元に訪れるのは月に数えるほどだった。

  優しい言葉をかけ微笑みかけてはくれたが、 自分をその腕に抱きしめてはくれなかった。

  サラーラは愛情に包まれる心地よさを知らなかった。

  その腕の温かさや、 抱きしめられて感じる安心感をずっと知らずに過ごしてきた。

  知らず心の中にあった空虚な部分がファビアスの愛によって満たされていく。

  少しづつ、 少しづつサラーラはファビアスに心を開いていった。 

  しかし、 そんなサラーラの心の変化を乳母が見逃すはずがなかった。

  毎朝、 サラーラの元に訪れるたびに目にする体中に残るファビアスの愛撫の跡。

  サラーラのどこか満たされた表情を苦々しい思いで見つめる。

  そして、 必死な思いでサラーラに母国マナリスへの慕情、 敵であるタラナートへの憎しみを

思い出させようと訴え続けた。

 「サラーラ様、 忘れてはなりません。 タラナートは、 ファビアス王はあなたのお父上、 お母上を

殺した敵なのですよ。 心を許してはなりません。 たとえ体を許しても。」

 「分かってる。 ばあや、 僕は……」

  乳母の諭すような言葉に、 サラーラは表情を曇らせ黙って目を伏せるだけだった。









  ある朝、サラーラは頬にあたる暖かい感触に目を覚ました。

  不思議に思って目を開けると、 ファビアスの寝顔が目の前にあった。

 「ファ……ビアスさま……?」

  驚いてつぶやく。

  これまでサラーラが目を覚ましたときに、 ファビアスがベッドにいたことはなかった。

  いつもサラーラが目覚める前にすでに起き出し、 朝から忙しい政務につくためにそっと

部屋を出ていっていた。

  それなのに、 今日は何故かサラーラが起きるまでここにいた。

  一緒にベッドの中で寝息を立てている。

  サラーラは初めて見るファビアスの寝顔をじっと見つめた。

  不思議な気分だった。

  そっと、 ファビアスを起こさないように手を伸ばして顔にかかる髪を払う。

 「う……ん…」

  ファビアスがふと顔をしかめた。

  慌てて手を引っ込める。

  引っついたままだった体を離そうとして、 しっかりと腰に回された腕に気付く。

 「あ……」

  腿にあたる固い感触に思わず頬を赤らめる。

  もぞもぞとしているうちに、 ファビアスが目を覚ました。

 「……おはよう、 サラーラ。 何をしている?」

  なんとかその逞しく屹立しているものから身を遠ざけようとしているサラーラの様子を、

ファビアスはおかしそうに見つめた。

 「どうして、 離れようとするんだ?」

 「だって……」

  サラーラの体に両腕をまわして自分の体の上に持ち上げると、 わざと朝の生理のために

勃ちあがっている自分のものをサラーラの腿に押し付けた。

  途端、 サラーラの顔が真っ赤になった。

 「サラーラ、 おはようのキスだ。」

  そんなサラーラを優しい目で見ると、 ファビアスは自分の唇をちょんちょんと指差して

キスを求めた。

  サラーラは赤い顔をしながらも、 素直にファビアスに顔を寄せる。

  軽く唇にキスしてぱっと顔を離した。

 「それだけか?」

  ファビアスは苦笑すると、 自分からサラーラに口付けた。

 「ん……」

  何度か軽く唇に触れたあと、 舌でペロリと舐める。

  それに促がされ、 サラーラが唇を開くとすぐさま中に侵入してくる。

  ファビアスはサラーラの口を貪りながら、 片手でそろりと背中を撫で下ろすと、 丸い双丘の

奥にある蕾に手を伸ばした。

  そこは昨夜の名残でしっとりと濡れていた。

 「んん……」

  サラーラは熱い息を吐きながら、 ファビアスの指を従順に受け入れた。

 「あ……ん」

  うっとりと快感に浸る。

 「サラーラ……いいか?」

 「ファビアス様……来て……」

  ファビアスの言葉にサラーラは誘うように腰を揺らめかせた。 

  ファビアスは体を反転させサラーラの体を組み敷くと、 おもむろに自分の肉杭をサラーラに

突き刺した。

 「ああ……ん」

  たいした抵抗もなくするりと入った熱い塊に、 サラーラが満足そうな吐息を漏らした。

  ほどなく、 窓から朝の光の差しこむ部屋の中をサラーラの喘ぎ声が流れ出した。









                 
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