Dear my dearest




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「すごいなあ……デューク様って王子様とお知り合いなんだ。すごいなあ」

 独り言を呟きながら、ニコルはお茶の用意をお願いしに厨房へ向かった。

 向かいながら、頭にあるのは先ほど知ったばかりのことだ。

 初めてこの国の王子様にお会いした。 それもこんな間近に。

 とってもとっても綺麗な方だった。

 それにとってもお優しそうで。 笑顔もとっても素敵だった。

 それにお従兄弟の方も、ちょっと怖いけど、でもとてもハンサムだった。

 …………デューク様には負けるけど。

 でも、王子様や王族の方達とお知り合いだなんて、それもお友達だなんて、すごすぎる。

 こんなこと、想像もしていなかった。

 自分が王子様と直に会って、お話できるなんて。

 まるで夢みたいだ。

 それもこれもデュークのおかげだ。

 やっぱりデューク様って、素敵な方なんだv

 ニコルはうふふ、と顔を綻ばせた。

 こんな素敵で格好いいデュークと結婚できたなんて、なんて自分は幸せなんだろう。

「あ、でも何もなくてもデューク様は一番素敵だけどね」

 そう、ニコルが一番好きなのは、自分と一緒に笑ってくれるデュークだ。

 一緒に本を読んだり馬に乗ったりお茶を飲んだり、そんな時のデュークは一番素敵だ。

 いつも優しく自分に笑ってくれる。

 そして、その中でも………

「デューク様とのキスってとっても好きv」

 今朝のおはようのキスを思い出す。

「今日はいくつキスしてくださるかな」

 何度もしたくなってしまう、デュークとの甘いキス。

 思い出したニコルは、何だか妙な気分になってきた。

「………早くお客様、お帰りにならないかな」

 そんな不埒なことを考えてしまう。

 早く二人きりになったら、そうしたらまたデュークはキスしてくれるだろうか。

「絶対してくださるよね」

 想像して、うっすらと頬を染める。

「あ、いけないいけない。 早くお茶をお持ちしなきゃ」

 いつのまにか、廊下の途中で立ち止まってしまっていたことに気づき、ニコルは

慌てて厨房へと急いだ。







 お茶の支度をお願いしたニコルは、とりあえずデューク達のいる居間に向かおうとした。

 お茶は後でメイドが持ってきてくれる。

「ニコル様、私達がお持ちいたしますから、ニコル様はお客様のお相手をなさってくださいませ。

侯爵夫人のお務めでございます」

 にこにこと仲良しのメイドがニコルに言う。

「うん、じゃあお願いします」

 最初は自分で持っていくと言っていたニコルだったが、メイドの「侯爵夫人の務め」という言葉に

慌てて頷いた。

 お務めならば、ちゃんと果たさなければならない。

 そうだ、お客様のおもてなしはとっても大切な役目だ。 特に旦那様のお客様は。

 お母様もいつもそう言っていた。

 ニコルは母が以前よく言っていた言葉を思い出し、自分の役目を果たそうと勢いこんで

居間へと向かった。

 が、ニコルがデューク達の元に行くのを阻む出来事があった。

 突然の来訪者が現れたのだ。







 ガラガラという馬車の音が廊下の窓から聞こえ、ニコルは誰だろうと首を傾げた。

 来客だろうか。

 またデュークの客が来たのかも知れない。

「今日はお客様が多い日なのかな」

 またデュークとの二人きりの時間が遠のいてしまう。

 心の中でがっかりしながら、それでもニコルは新たな客を迎えようと玄関へ急いだ。

 一人の女性が、ちょうど馬車から降りようとしていた。

 その顔を見たニコルは目を見開いた。

 それは、あの時街の中で会った女性だった。