Dear my dearest



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「ん………」

 ころんと寝返りをうったニコルは、何か暖かいものにぶつかった。

「?」

 何だと思って目を開けると、そこにはニコルの大好きな人の姿が………。

「あ、デューク様………」

 慌てて飛び起きる。

 デュークはぐっすりと眠っているようだった。

 伸ばされた左腕に、ニコルは自分が彼の腕枕で眠っていたことを知った。

「えへへ〜v」

 何だか嬉しくなってもう一度ころんと横になる。

「デューク様、いつお戻りになったんだろう。僕、全然気づかなかった……」

 そう独り言を呟きながら、そっと目の前の端整な顔立ちを見る。

 ニコルの顔が嬉しそうに崩れる。

「デューク様の寝顔って初めてかも………あ、まつげ長い……金色だあ……」

 大好きな彼が今一緒なのだ。

 ニコルは嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

「起きてすぐデューク様のお顔を見れるなんて、すごく幸せ………」

 何度か一緒に眠ったが、いつも彼の方が早く起きてしまっていた。

 こうやって、朝一緒のベッドにゆっくりとしていられるなんて。

「うふふv」

 ニコルはますます嬉しくなって、その大きく開いた腕の中に自ら身を寄せていった。

「暖かい…v」

 胸に頬をくっつけて満足そうに吐息をつく。

 とっても気持ちが良かった。




「ん……んん?」

 ごそごそと胸元で動くものに、デュークは意識を覚醒していった。

 目を開くと、そこにふわふわと揺れる髪が…。

 デュークの口元に笑みが浮かんだ。

「………おはよう、ニコル」

「きゃっ」

 突然、腰に腕が巻きついてきて、ニコルは思わず小さく叫んでいた。

 慌てて振り仰ぐと、目を開いたデュークがこちらを見て笑っている。

「デューク様っ 起きていらしたんなら教えてくださらないと! 僕、びっくりしちゃいました」

「今、目が覚めたんだよ。悪戯な誰かが私のそばでごそごそしているから」

「・…ごめんなさい、僕が起こしちゃったんですね。デューク様、お休みだったのに……」

 途端、シュンとしょげる。

「違うよ。君のせいじゃあない。今日は可愛いニコルとずっと一緒にいられると思うと

もったいなくて眠っていられなかったんだ」

「ずっと?」

 ぱっと顔が輝く。

「デューク様、今日は僕とずっと一緒にいてくださるの? お仕事にいかなくていいの?」

「ああ、今日は休みだ。ずっと屋敷にいるよ」

「本当にっ?! じゃあ一緒にお食事して、一緒にお庭をお散歩したり、ご本を読んだり

できるの? 今日はずっとずっとずーっと一緒にいてくださるの?」

「何でもニコルの好きなことに付き合うよ。ここしばらく寂しい思いをさせてしまったしね」

「デューク様……!」

 喜びを体全身に滲ませて、ニコルはデュークに抱きついた。

 と、ぱっと顔をあげる。

「それじゃあ、僕、朝食の支度をお願いしてきますね。 コックに一緒にお食事するんだって

知らせてこなきゃ。あっ カディスさんにも朝食の用意をしなきゃ!」

「ニ、ニコル?」

 ばたばたとベッドを降りるニコルに、デュークはちょっと待て、という気分だった。

 彼としては、気持ちのいい朝のひととき、このまましばらくベッドの上で、愛しい彼と二人きり

イチャつくのも……そしてあわよくば、と、そう目論んでいたのだ。

 が、当の相手はそんなデュークの下心を知る由もない。

 これから今日一日の楽しい計画を考え、元気一杯だ。

「ニコル……っ」

「デューク様もはやく食堂に来てくださいね」

 そういい残して部屋を飛び出して行こうとする。

 しかし、扉に手をかけて、あ、と何かを思い出したように振り返った。

「……?」

 がっくりと肩を落としていたデュークは、また自分の元に駆け戻ってくるニコルを見て

何だと首を傾げた。

「デューク様、朝のご挨拶」

 ニコニコと笑いながら、ニコルはそんなデュークの唇にちゅっとキスをした。

「!」

「えへへv」

 驚いたように眉をあげるデュークを見てニコルは頬をピンク色に染めると、今度こそ

扉の向こうへと駆けていった。