Dear my dearest
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| 自分の部屋へと戻ってきても、ニコルは目を覚まさなかった。 デュークの腕の中で気持ちよさそうにくうくうと寝息をたてている。 その笑顔を見て、デュークは知らず優しい笑みを浮かべていた。 大好きな主人が戻ってきたことに気づいたトートが嬉しそうにベッドの上で飛び跳ねている。 「……しっ トート、静かにしろ。ニコルが目を覚ます」 ニコルをベッドの上にそっと下ろそうとすると、子犬がてとてとと駆け寄ってきた。 その姿をデュークが睨みつける。 「くう………」 叱られると思った子犬がぺたりとその場に後足を伸ばして尻をつく。 じっと見上げるその目は遊んで、と訴えかけているようだった。 「お前ももう寝ろ。ニコルを起こすんじゃあないぞ……疲れているのだから」 ポンポンと子犬の頭を撫でる。 と、その行動が悪かった。 遊んでもらえると勘違いした子犬が、その手にじゃれ付いてきたのだ。 「わんっ!」 「あ、こらっ」 甲高いその鳴き声に、デュークがあっと慌てた。 が、もう遅い。 「ん……トート?」 眠っていたニコルがころんと寝返りを打ってうっすらと目を開けた。 「ニコル、すまない。起こしてしまったな」 ぼんやりと目を向けるニコルに、デュークはそっと話しかけた。 「………あ……デューク様だ……」 男の姿を認めたニコルがほんわりと笑みを浮かべた。 「デューク様、お帰りなさい……」 小さくそう言って両手を伸ばす少年が可愛くて、デュークも笑みを浮かべた。 「ただいま……ニコル」 伸ばされた腕に誘われるように、その滑らかな頬に軽く口付ける。 ニコルはまた笑みを浮かべると、ぎゅっと首に抱きついてきた。 「あのね……デューク様。僕ね……」 「ん?」 耳元で囁かれるように話しかけられ、何だと尋ねる。 「僕ね、今、夢見てたの」 「夢?」 「うん、僕ね………デューク様がとっても好きなの」 「私もニコルが好きだよ」 「うん………」 返される言葉に嬉しそうに頷いた。 「僕ね………」 「うん?」 「初めてお会いした時、デューク様のこと王子様みたいって、そう思ったの」 「王子様? 私が?」 「きらきらしててね、とっても素敵でね、こんなに素敵な人がいるんだあって、びっくりしたの」 「ニコルも私が今まで会った誰よりも一番可愛いよ」 「ほんと?」 「ああ、一番綺麗で可愛い」 そう言って、また頬にキスするデュークに、ニコルはえへへと笑った。 「僕、デューク様の奥様になれてとっても嬉しいの。とってもとっても大好きなの」 首に回された腕に力がこもる。 「ずっとずっと一緒にいたいの………デューク様が一番いいの……」 「ニコル………」 可愛い睦言に、デュークの胸に例えようもないほどの愛しさが込み上げる。 たまらず、少年の顔中に何度も何度も軽くキスを繰り返す。 「ずっと一緒だ………ニコルはずっと私の妻だよ?」 「うん……大好き……」 気持ちよさそうに呟く。 デュークはその顔を見ながら耳元で囁いた。 「ニコル………いいかい?」 そう問いながら、手はすでに少年の腰にかかっている。 「ん………」 ニコルはうっとりと頷き目を閉じると…………………………大きなあくびをした。 「………ニコル?」 額にキスしても何の応えもないことに顔を見ると、ニコルはすやすやと寝入っていた。 「………………………………………………………………………………」 デュークの肩ががっくりと落ちる。 「ニコル……………」 そこに今まで遠慮していたのか、ベッドの端で丸まっていたトートがもそもそとデュークの そばに寄ってきた。 「くうん………」 デュークの顔を見上げると、ころんと仰向けになる。 それを見て、デュークの顔に苦笑が浮かんだ。 「まあ、いいか………」 まだまだ時間はあるのだから・。 デュークの心には余裕があった。 そう、今日城に上がったデュークは、アーウィンに嬉しい報告を受けたのだ。 一両日中には許可が下りるだろうというものだった。 許可………婚姻の再認可である。 それを聞いたデュークはほうっと安堵のため息を漏らした。 これでニコルと夫婦のままでいられるのだ。 許可が下り次第、アーウィンが屋敷に知らせに来てくれるはずだ。 明日はニコルと一日一緒にいられる。 「ニコル………ずっと一緒だよ」 デュークはそう囁くと、眠る少年にそっと口付けた。 |