Ｄｅａｒ ｍｙ ｄｅａｒｅｓｔ
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| おかしい。 カディスはここ数日にニコルの様子がどこかおかしいことに気づいていた。 何か心配事でもあるのだろうか。 時々ぼんやりしてははあっとため息をついている。 いまもカディスに薬を持ってきてくれたのだが、水の入ったコップを手に何かぼんやりと考えている。 「あの……ニコル様？」 どうにも気になって仕方がなく、恐る恐る声をかけた。 「あ、ごめんなさい。お水ですよね」 カディスの声にニコルははっと我に返ると、はいと水を差し出す。 「あ、これは………いえ、そうではなく」 コップを受け取り、礼を言いかけてそうではないと首を振った。 「ニコル様、何かお気にかかることがあるのでは？ またデューク様のことでしょうか？」 「え？」 カディスの言葉にニコルはきょとんとした。 「デューク様がどうかなさったんですか？ 今日もお城にお仕事に行かれましたけど？」 「え？ いえ……」 反対に問い返され、言葉に詰まる。 どうやらデュークのことで悩んでいるのではないらしい。 では一体……？ カディスは首を傾げながら再度ニコルに問うた。 「何か心配事でもおありなのではありませんか？ この頃よく考え事をされているようですが」 「うん………」 言おうか言うまいか、どうしようか、と悩んでいる様子だ。 「あの……あのね、カディスさん、笑わないでね」 「はい？」 やっと決心して口を開こうとするニコルに、カディスも自然身を正した。 「デューク様って、素敵だよね」 「…………………………………はい？」 ぽっと顔を赤らめて言うニコルにカディスは目が点になった。 今更何を、と思わず言いそうになった。 いままでにも散々デュークは格好いい、素敵だ、すごいと言っていたではないか。 それを何を改めて、と思う。 「僕、今まであんなに素敵な人に会った事なかったの。デューク様みたいに素敵な人の 奥様になれて僕って本当に幸せだよね」 「はあ………」 なんだ、単なる惚気かと肩すかしにあった気になる。 そのようなことをずっと考えていたのかと、カディスは内心ため息をついた。 「でね、僕思ったんです。デューク様ってやっぱりお城でもとっても人気あるんだろうなって」 その言葉にカディスはぎくりとした。 やはりデュークのことか。 「お城にはたくさん綺麗な方がいらっしゃるんでしょうね。僕なんかと違って」 「そんなことございません！ ニコル様はとてもお綺麗でいらっしゃいます！ええ、今までの お相手のご婦人方などに負けておりませんとも！」 思わず語る言葉に力がこもった。 が、そのために自分が失言したことに気づくのが遅れた。 「………今までの？」 はっと気づいた時には遅かった。 ニコルが妙な表情でカディスを見ていた。 「いえ、そうではなく………あの、ですね。あの………」 額に汗が浮かぶ。 「デューク様、いままでお付き合いしていた方がそんなにいらっしゃったの？」 「お付き合いといっても、その……なんですか。……だ、大丈夫でございますよ。ニコル様が ご心配されるようなものでは……ええ、ほんのちょっと、短い間のお遊びというか……っ！」 口を滑らせて、しまったとまた慌てて口をつぐんだ。 「お遊び？」 案の上、ニコルは眉を顰めていた。 「デューク様、いろんな方と遊んでいらしたの？」 「いえ、ですから、ニコル様………」 どうしたものか、と内心頭を抱えた。 自分らしからぬ失態だ。 こんな話をニコルにしてしまったとデュークが知ったら………考えるだに恐ろしい。 カディスは背中を冷や汗が流れるのを感じた。 |