帰ってきたデュークの部屋にまでついていき、 着替えようとする彼の手伝いをしようとする。

　「ニ、 ニコル？」

　「デューク様のお着替え、 手伝います」

　 ニコニコと脱いだ上着を受け取ろうと手を差し出す。

　 仕方なく上着を手渡すと、 大切そうに腕に抱えて衣装部屋に持っていく。

　 すぐにパタパタと駆け戻ってくると、 今度はブラウスに手を伸ばす。

　「ニコル……っ！」

　「これも着替えますよね」

　 そう言いながらさっさとブラウスのボタンを外していく。

　「ニコルっ！　そ、 それはいいっ！」

　「だって……」

　 慌てて身を引くデュークに、 ニコルが不満そうな顔をした。

　「僕、 デューク様のお世話したいのに………」

　「ブラウスくらい自分で脱げるよ」

　「じゃあ………おズボン、 弛めますね」

　「………っ！！」

　 そう言ってウェストに手を伸ばすニコルにデュークは絶叫しそうになった。

　 冗談ではない。 そんなところを触られたら………っ！

　「ニ、 ニコル………っ　そ、 そうだっ！　コ、 コーヒー……コーヒーを持ってきてくれないか。

喉が乾いてしまって……っ！」

　 少年の手を何とか遮りながらデュークはとっさに思いついたことを口にした。

　「………？　わかりました。 すぐにお持ちしますねっ」

　 不思議そうにデュークの慌てぶりを見たニコルだったが、 こっくりと頷くと大好きな旦那様の

願いをかなえるために急いで部屋を出ていった。

　「はあ〜…………勘弁してくれ……」

　 途端、 脱力したデュークはがっくりと椅子に座りこんだ。

　 下半身に伸ばされた少年の小さな手を見た途端に体が反応したのを感じた。

　 あのままではニコルに気付かれてしまっただろう。

　「…………まいった……」　

　 最近口癖のようになってしまった言葉を口にする。

　 ニコルの方に他意はないから余計に始末が悪い。

　 おまけに今日は昨夜のこともあって、 自制心が崩れそうになるのが早い気がする。

　 このまま昨夜の続きをしてしまおうか。

　 そんな不埒な考えが頭を過った。

　 今なら少年も拒絶はしないだろう。

　 昨夜のように彼を快感の虜にしてしまってそのまま最後まで………

　 そう考えて頭を振る。

　 だめだ。

　 そんな、 いいかげんな状態で少年の最初を奪いたくなかった。

　 初めてはちゃんとベッドの中で優しく………

　 今夜だな。

　 そう一人ごちる。

　 今夜こそ、 ニコルの全てをもらうのだ。

　 そう心に決めたデュークは、 はたと今の自分の状況を思い出した。

　「そうだ！　ニコルが戻ってくる前に着替えを済ませておかないと………っ」

　 慌てて立ちあがると、 デュークは急いで服を着替え始めたのだった。

　「ニコル 、 今夜も私のところに来るかい？」

　 夕食が終わり、 居間でくつろいでいたデュークが傍らのニコルに囁く。

　 お腹一杯でうとうとしていたニコルはその言葉にはっと顔を上げた。

　 ん？　と見下ろす顔が微笑んでいる。

　「………一緒に寝るかい？」

　 そう囁きながら、 デュークは傍らのソファに座るニコルを自分の膝に乗せた。

　 そして頬にかかる髪をそっとかきあげると、 ピンク色のほっぺにキスをする。

　 そのまま首すじへと降りていく唇に、 さすがのニコルもデュークの言わんとすることを察した。

　「あ………」

　 みるみるニコルの顔が真っ赤になる。

　 そして小さくコクンと頷いた。

　「いい子だ」

　 デュークは笑みを浮かべると、 少年の体を抱いたまま立ちあがった。

　「デュ、 デュ―ク様っ？！」

　「いいから捕まっていなさい」

　 軽々とニコルを抱え上げたデュークはそのまま居間を出て階段を上っていった。

　「あ………」

　 デュークの首に捕まりながら肩越しに階下を見下ろしたニコルは、 居間の扉の前に立つカディスの

姿に気付いた。

　 クレオール家の執事はニコルが自分に気付いたことを知ると、 にっこりと微笑んだ。

　 その笑みにニコルはまたもや真っ赤になった。

　 そしてデュ―クの首にぎゅっと捕まると、 その首筋に隠れるように顔を埋めた。