Dear my dearest
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体中がふわふわと快感の余韻に浸されている。 「ニコル………」 デュークが優しくキスしてきた。 それに無意識に答えながらニコルはぼんやりと考えていた。 これが結婚なんだ………これで僕は本当にデューク様のものになったんだ……… 恥ずかしかったけれど、 それ以上に気持ち良かった。 デュークのことがそれまで以上に身近に、 そして大好きになった気がする。 僕は本当にデューク様の奥様なんだ……… そう思うと胸に熱いものが込み上げてきた。 彼が好きで好きでたまらない。 もう彼がいない毎日なんて考えられない。 この邸に来る前、 自分がどうやって生きてきたのかも思い出せないくらいだった。 「デューク様、 大好き……」 重く感じる腕を持ち上げてデュークに抱きつく。 「ニコル………」 強く抱き返され、 ニコルは心地よい疲れを感じた。 眠気が急に襲ってくる。 「………ニコル、 とても可愛いよ」 デュークがまたキスをしかけてきた。 ニコルは半分うつらうつらとしながらそれに応えた。
デュークはますます欲望が高まっていくのを感じた。 早くニコルの全てを自分のものにしてしまいたくて、 下半身が痛いほどに疼く。 絶頂の余韻に荒い息をしていたニコルが少し落ち着いたと見て、 デュークは行為を再開 しようとした。 今度は自分も快感を得るために。 「ニコル、 とても可愛いよ」 そう言いながらキスをすると小さな唇が甘く応えてくる。 それに口元で微笑みながら、 また少年の肌にそろりと手を伸ばす。 と、 ワン! 突然、 耳元で子犬の鳴き声がした。 慌てて見ると、 トートがすぐ側で自分達を覗きこんでいた。 何をしているの? 遊んでるの?と言いたげに嬉しそうに尻尾を振っている。 自分も混ぜて欲しいのだ。 先程からニコルのどこか気持ち良さそうな声が聞こえていた。 いつも自分としているように、 デュークとシーツの中でじゃれているのだと思ったが、 混ぜてもらおうにもなかなか自分に気付いてくれない。 それにどこか自分が割りこめない雰囲気があった。 仕方なく、 トートは側に置いてあった熊のぬいぐるみにかじりつきながら、 ご主人たちが 自分に気付いてくれるのをひたすら待っていたのだ。 「…………トート……」 遊んで遊んでv とじゃれつく子犬にデュークははあっとため息をついた。 すっかり子犬の存在を忘れていたのだ。 が、 ここで止めるわけにはいかない。 「……すまないが、 遊びは明日だ。 ………ほら、 お前は遠慮してくれ」 ウウ〜ッ と不満そうに唸る子犬の首を捕まえベッドを下りると、 部屋の隅に置いてあるソファに ぽんと邪魔者を下ろした。 ワンワンッ と異議を唱えるトートに、 「悪いな」 と一言告げると、 デュークはいそいそとニコルの 待つベッドへと戻った。 「ニコル………」 隣に身を横たえ、 さあ再開とばかりに少年の顔を覗きこむ。 が……… 「……ニコル? ニコル?!」 すでに少年は眠りの国へと旅立っていた。 すやすやと気持ち良さそうに寝息を立てている。 「ニコル……!」 遠慮がちに体を揺さぶってみるが、 すっかり寝入ってしまったニコルが起きる様子はまったくない。 「……………それはないだろう……」 がっくりと肩を落とす。 準備万端整ったと言わんばかりの自分の下半身が、 早くと催促している。 しかし眠ってしまった相手に無理に行為をしかけるのはデュークのプライドが許さなかった。 「……ニコル〜………」 それでも恨めしそうな声が出てしまうのは仕方がない。 「これをどうしろと言うんだ………」 はちきれんばかりの欲望がデュークを苛む。 このまま襲ってしまおうか……… そう思っても、 しかしやはりプライドが邪魔をする。 気持ち良さそうに眠るニコルが恨めしく思える。 それでもしばらく少年の寝顔を見ていたデュークだったが、 とうとう今夜は無理だと諦める。 少年の傍らに身を横たえるが、 はけ口を失った欲望が体中を駆け回る。 悶々としながら横になっていたが、どうやっても眠りは訪れそうになかった。 奪いそこねたニコルが傍にいるので余計にだ。 寝息を聞くたびに、 寝返りを打ったニコルの足が手が自分を蹴飛ばすたびに、 その存在を 感じて欲望がこみ上げる。 またポコリと胸に少年の腕が当たる。 「…………はあ…」 とうとう眠りを放棄したデュークはむっくりと起き上がってベッドを下りた。 今夜ニコルの傍にいるのは拷問だった。 別の場所で酒でも煽らなければやってられない。 デュークはとぼとぼと寝室を出て行くと、 隣の居間のソファに座りこんでワインとグラスを手に取った。 ………………今夜はもう眠れそうになかった。
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