Dear my dearest

 

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    一緒に寝たい……




  その言葉を聞いた瞬間、 デュークの頭の中が真っ白になった。

  何………今ニコルは何て言ったんだ……?

  予想だにしていなかったことに思考力がゼロになる。

  寝る……寝る?! 寝るということは………どういうことだ?! ニコルがここに、私のところに

来るということは……もしかして……いや待て……

  いろいろな考えが頭の中をぐるぐると駆け巡る。

  たった今まで、 少年を抱くことばかり考えていたのだ。

  そこへ当の本人がやって来たものだからデュークの思考はひたすら妙な方向へ行ってしまう。

  少年に言葉を返すことも忘れ、 デュークはただパニックに陥っていた。

  そんなデュークをニコルがじっと見ていた。

  やっぱりダメかなあ………僕、 ちょっとお寝相悪いし…デューク様の邪魔になるかなあ…

  どきどきしながら返事を待つ。

  でも本当にデュークと一緒に眠りたかったのだ。

  ほとんど覚えていないけれど、 一度だけ、 あの嵐の夜にデュークの側で眠った。

  あの時のどこか心地よい安心感が記憶の端にあった。

  自分を抱きしめてくれた温かい腕の温もりをかすかに思い出す。

 「………デューク様……だめ?」

  子犬とぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら、 不安そうに尋ねる。

  その姿にデュークははっと我に返った。 

 「ニ、ニコル……?」

 「やっぱりダメですよね……ベッド狭くなっちゃうし……デューク様、 ゆっくり眠れなくなっちゃうから…」

  いや、 眠れなくなるのはベッドのせいじゃなくて………

  そんなことを考えながらもデュークはしょんぼりと部屋を出て行こうとする少年を呼び止めた。

 「ま、 待てっニコル!」

  その声にニコルが足を止める。

 「い、 いいぞ。 ………一緒に寝よう」

  何てことを言っているのだ! 自分は!

  そう思う心とは裏腹に口が勝手に動いてしまう。

 「こんなに広いんだ。 ニコルが来ても全然大丈夫だよ」

  あまつさえにっこりと笑みまで浮かべてしまう。

  デュークの言葉にニコルの表情がぱあっと明るくなった。

  嬉しそうにベッドに駆け寄ってくる。

  そしてベッドの足元に子犬を置き、 枕元に熊のぬいぐるみを置くと上掛けを持ち上げて待つ

デュークの傍らにするりと身を滑りこませた。

 「えへへ……v」

  上掛けからちょこんと顔だけを出して恥ずかしそうに、 でも嬉しそうに傍らのデュークに笑いかける。

  う………っ!

  その顔を見たデュークが内心でうめき声を上げる。

  思わず手が伸びそうになる。

  ダメだ………ニコルはそんなつもりでここに来たわけでは………

  そう必死に自分に言い聞かせる。

  まるで拷問のようだった。

  今すぐにでも少年を抱いてしまいたい衝動に駆られる。

  いいではないか。 ニコルも自分のことを好いてくれている。 大体15歳にもなればその意味も

わかっているはずじゃないか。

  心の中でそう囁く声がする。

  いや……! ダメだ…… そのようなことをしてニコルが怯えてしまったらどうする………!

もしこの子に嫌われてしまったら………

  理性がそう叫ぶ。

  しかしこの愛しい少年を抱きたい……! 抱いて、 自分のものだという印をその体にも心にも

刻み込んでしまいたい……!

  体中に愛しさと欲望が渦巻いている。

  額に汗が浮かぶのがわかる。

  デュークの心の中で理性と欲望が戦い続けていた。

  と、

 「……デューク様、 大好き」

 「!」

  ピトリと柔らかい体が寄り添ってくる。

  鼻先を甘い香りがかすめる。

  その瞬間、 デュークは自分の自制心がガラガラと崩れ去っていく音を聞いた。