Dear my dearest

 

 

 

 

    邸に戻ったデュークは、 血相を変えて出迎えたカディスに苦笑した。

 「どうした、 カディス。 花嫁はもう着いているのだろう? そんなにひどい娘なのか? お前が

閉口するほど」

 「デューク様! それどころではありませんっ とにかく中へ……っ」

  中へ促がしながらもカディスはしきりに持っていたハンカチで汗を拭く。

 「まったく……私には何がなにやら……どうしてこのようなことが……」

  ぶつぶつとつぶやく老人に、 のんきに笑っていたデュークもさすがに何か変だと感じる。

 「一体何だ? カディス。 花嫁は来ているんだろう?」

 「ええ、 ええ、 おいでになっておりますともっ ” 花嫁 ”様は確かに……ああ、 どうして

このような……」

 「何だというんだ。 はっきり説明しろ」

 「とにかくお会いになってください。 お会いになればわかりますっ」

  居間にいるという ” 花嫁 ” のところに花婿である主人を案内する。

  ぶつぶつと訳のわからぬことをつぶやくばかりで少しも説明しようとしない執事に埒があかないと

悟ったデュークは、 とにかくその ” 花嫁 ” に会えば全てわかると、 邸の中を歩いていった。











  ニコルは執事だという老人に案内されて綺麗な居間に通されていた。

  入った途端、 その豪華さに目を見張る。

 「うわあ……」

  部屋の中、 見るもの全てがニコルにとって今までに目にしたこともないような豪華なものだった。

  天井から吊り下がるシャンデリア、 綺麗に彫刻された白い大理石のマントルピース、 その上には

きらきらと輝く蜀台や彫刻などの置物が品良く並べられている。

  足元を見ると、 ふかふかとした絨毯に足首まで埋もれそうだった。

  執事に促がされるまま、 これまた豪奢な刺繍を施した布張りのソファに恐る恐る腰を下ろす。

  座る瞬間、 汚れた自分の服装が気になったが、 自分を見ている執事が気にしていないようなので

仕方ないと思いきって座りこんだ。

  心の中で、 お掃除をする人ごめんなさい、 と謝る。

  瞬く間に目の前のテーブルにお茶の用意が整えられていく。

 「あの………」

  落ち着かず、 扉から出ていこうとする執事に声をかけるが、 にこやかに 「ご主人様はすぐに戻られます

のでお待ち下さい」 と言われ、 それ以上話しかけることができなかった。

  ぽつんと一人残された部屋の中で途方に暮れる。

  こんな綺麗な部屋の中でどうしていいのかわからない。

  ぼうっとするニコルの目に温かな湯気を立てているお茶のカップが目に入った。

  いい香りがするそれに、 喉の渇きを覚える。

  そっと手を伸ばしその金で縁取りされたカップを持ち上げ、 恐る恐るいい匂いがするお茶に

口をつける。

 「………美味しい……」

  喉を通っていく薫り高い液体に思わず賛嘆の声が出る。

  もう一度目をやると、 添えられたお菓子たちも見るからに美味しそうだった。

  育ち盛りのニコルは大好きなお菓子についつい手が伸びる。

  ケーキを一口食べて思わずにっこりとしてしまった。

  あとはもう夢中だった。

  いつしかニコルはテーブルの上の宝物以外、 忘れてしまっていた。







  それからどれほど経っただろうか。

  突然開かれた扉に、 ニコルははっと我に返った。

  慌てて扉の方に顔を向けて立ち上がる。

  と同時に、 驚いたような男の声がした。

 「一体どういうことだっ?!」