Dear my dearest
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窓に叩きつけるように激しい雨が振っている。 遠くの方でかすかにごろごろという音が聞こえてきた。 ニコルはベッドの中で不安そうに子犬……トートと名づけた、 を抱えていた。 「こっちにくるかな………雷、 こっちにくると思う?」 心細げにトートに問いかける。 腕の中で子犬も不安そうに鼻を鳴らしながらニコルの腕の中に鼻を突っ込んでいた。 ニコルは雷が大っ嫌いだった。 苦手といっていい。 あの大きな音がすると、 怖くて怖くて心臓が止まりそうになる。 暗い空に稲妻が光るのを見ると、 恐ろしくて叫びそうになる。 あの光が、 空を引き裂くような音の元がここに落ちたらどうしよう。 そう考えると怖くて仕方がないのだ。 「こっちにこないよね。 すぐにどこかにいっちゃうよね」 かすかに震えながら、 一刻も早くあの恐ろしい音が消えることを祈る。 しかし、 ニコルの必死の願いも空しく、 雷雨はますますひどくなっていった。 ピカッ! 突然窓の外が一瞬明るくなる。 と、 凄まじい音がして雷が落ちた。 ガラガラ……ガシャーン!!! 「ひ………っ!!」 ニコルは抱いている子犬に顔を埋めて必死に恐怖と戦った。 が、 その後も雷音は途切れることなく、 何度も何度もニコルの耳を襲った。 せめて稲妻の光だけでもさえぎろうとぎゅっと目を瞑るが、 瞼の裏に明るい光が映り完全に追い出す ことができない。 腕の中でトートも初めて体験する凄まじい音にぶるぶると震えていた。 「だ、 大丈夫、 大丈夫、 ここには絶対落ちないから………落ちない……きゃあっ!」 ガシャー−−−ン!!! ひときわ大きな音を立てて雷が落ちた。 「怖い……怖いよお……っ 誰か……」 部屋の中に一人でいる事に耐えられなくなる。 こんな時、 実家では兄がずっと側にいて抱きしめてくれた。 「やあ……誰か………」 恐怖のあまり涙をにじませた目が暗い部屋の中を助けを求めるようにさまよう。 その時、 窓から見える自分の部屋からすぐ近くの部屋にポッと明りが灯ったのを見た。 あそこに誰かいる………! そう思ったニコルは、 そこが誰の部屋なのかも考えずベッドを飛び出していた。
帰ってきたと同時に激しく降り出した雨を、 デュークは自分の部屋の窓から眺めてほっと息をついた。 あと少し遅ければひどい目に会っていたところだ。 いくら馬車とはいえ、 この雷雨の中を出歩くのはぞっとしない。 今もすさまじい音を立てている雷に顔をしかめながらデュークは自分の幸運を喜んだ。 さっさと寝てしまおう。 寝着に着替えベッドに入ったデュークは、 また枕元に花が置いてあることに気付いた。 「今日はクッキーか」 添えられたお菓子に顔を綻ばせる。 しかし今は食べる気になれず、 側のテーブルにそれを移すと、 さあ寝ようとばかりに身を横たえた。 と、 突然バタンと扉が大きな音を立てて開いた。 「な、 なんだっ?」 ガシャーーーーーーン!!! と、 その時凄まじい音が部屋の中を鳴り響いた。 「きゃああああっ!!」 驚いて飛び起きたデュークの胸に、 叫び声を上げて何かが飛びついてきた。 ワンワンワンワンワン! 子犬のけたたましい鳴き声もする。 「なんだっ! 一体何事だっ?!」 胸にしがみつく侵入者に、 デュークはわけもわからずただ呆然としているだけだった。
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