Dear my dearest






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  想像もしていなかったニコルの拒絶だった。 何カ月も据え膳に耐え、やっとこの日を迎えたはずなのに・・・。 なのに、
 
愛しいニコルの口から出たのは自分を拒絶する言葉。しかも・・・・・・。

 ・・・・・・変? 変なものって・・・・・・・・・・・・。

 今まで何人もの貴婦人達を歓ばせ、うっとりと称賛の目で見つめられてきた自慢の一物だ。 なのに今、それを見るニコルの

目にあるのはそんな甘いものではなく、拒絶と怯えだけだ。 耳の奥では先程投げつけられた言葉が今も反響している。

 嫌・・・・・・入れるなって・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・。

 必死に自分の後ろを手で隠しながら、駄目だと首を振るニコル。 それが意味することは・・・・・・。

 私はもしかして・・・・・・ニコルに拒まれた・・・のか?

 こんなことは初めてだった。 今までこんな形で自分を拒まれたことのないデュークには信じられないことだ。 しかも

その相手は、彼がこれまでになく本気で熱愛し、大切に大切にしてきた可愛い愛しいニコルだ。 なのにその相手に拒まれて

しまった。 そのショックは大きい。

「ニ、ニコル・・・・・・」

 ショックのあまり掠れた声で小さく名を呼ぶが、しかし当のニコルはそんなデュークのショックも気づかないのか、ひたすら

自分の貞操を守ることに必死だった。

「ダメっ 絶対にダメなの! そんなの絶対入らないもん!」

 そう拒絶の言葉を吐き、ぶるぶると激しく首を振る。

 その激しい拒絶に、デュークは声もなくただ呆然とするばかりだった。

 その時、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コン、コン・・・・・・。

 二人のそんな状況を打ち破るかのように、控えめに寝室の扉をノックする音が聞こえた。

 ビクンと扉を向くニコル。 その真ん前に座り込んだデュークは虚ろな目でニコルの動きを追うかのようにのろのろと

扉に視線を送る。

 ・・・・・・・・・コンコン。

 そんな二人の耳にもう一度ノックの音が聞こえた。先程よりも心持ち強く響いた音に反応したのはニコルだった。

「・・・・・・っ は、はいっ!」

 慌ててベッドから飛び降り、扉へと走り寄る。 が、何も身に着けていない自分の格好に気づき、また慌ててベッドへと

戻ってきた。 ベッドのそばに脱ぎ捨てられた衣服に手を伸ばそうとして、こちらを向いているデュークと目が合ったニコルが

とった行動は、ショックに落ち込むデュークをさらに打ちのめすものだった。 

 なんと、ニコルは顔をちょっと歪ませると、ふいっと彼から目を逸らしたのだ。

「!!!」

 そのまま急いで衣服を身を付けたニコルが扉に走っていくのを目で追いながら、デュークはショックのあまり

気が遠くなりそうだった。

 ・・・・・・・・・目を、逸らした? 私を見るのを嫌がったのか? ・・・・・・・・・・・・もしかして、私を嫌がって・・・る?

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ぐらぐらとする頭でぼんやりと考える。

 ニコルに嫌がられた・・・・・・顔を背けられるほど・・・・・・・・・・・・・それは・・・・・・・・・。

 考えれば考えるほど先程のニコルの態度が目に浮かび、さらに嫌な考えがジワリと生まれた。

 もしかして・・・・・・・・私はニコルに嫌われた・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・っ!」

 考えただけでも気が遠くなりそうだ。 ニコルに嫌われるなんて、とても耐えられることではない。

「ニ、ニコル・・・・・・」

 もう一度愛しい相手の名を呼ぶ。 が、振り絞るようにして出したデュークのその声は扉に向かうニコルには聞こえなかった。





 ニコルは扉に辿り着くと、ドアノブに手をかける前、少しだけ躊躇した。

 頭の中が混乱でぐちゃぐちゃだったのだ。 

 だって・・・・・・デューク様、変なことしようとするんだもん・・・・・・。

 想像もしていなかったことだ。 自分のアソコにデュークのアレを・・・・・・。 

「・・・・・・・・・・・・」

 ちょっと考えて、すぐにぶるぶると首を振る。

 無理。絶対に無理だ。 だって、あんなに大きいのだ。 ニコルが両手でやっと握れるくらい大きくて、それに太くて・・・・・・。

しかもそれは握っているとさらに大きくなっていった。 ニコルが今までに見たことがないほどの大きさに。 

なのにそれを自分の中に、なんて絶対に絶対に無理に決まっている。 入るはずがない。 

「僕のお尻、壊れちゃうよ・・・・・・」

 考えただけでも怖い。 あの優しいデュークがそんな無茶なことを言い出すなんて、信じられなかった。

「デューク様、今日はちょっとおかしいんだ」

 今まで一度もそんなことをしようとはしなかったのに。 今日のデュークは変だ。 絶対におかしい。

「・・・・・・きっとお疲れになってるんだ」

 お仕事で疲れているのだろう。 疲れて頭がおかしくなっているんだ。 いっぱい休んで元気になれば、きっといつもの

デュークに戻ってくれる。

 ニコルはそう思いながら、ドアノブに手をかけた。

 今日はこのままデュークには近づかないほうがいい。 そう思いながら。

 が、その考えは扉の向こうにいたカディスの思いがけない知らせに吹っ飛んでしまったのだった。