Dear my dearest
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「っ!!! ニ、ニコルっ!! 何を・・・っ!!」 デュークが突然大声を上げた。 なんと、ニコルがデュークの下肢に手を伸ばしてきて、少し元気を失っているそのモノに触れてきたのだ。 いや、触れているだけではなく、両手でぎゅっと握り締めてくる。 「ニコルっ!!」 思いがけない攻撃に、デュークはなんとも情けのない声を上げてしまった。 まさか、ニコルがこんな行動に出るなど、思いもしなかったのだ。 たった今まで話していた内容から、どうしてこんなことになるのかわからない。 「ニコル・・・は、離しなさいっ!」 しかしニコルは何かを確かめるように、何度も両手でぎゅっぎゅっと力いっぱい握り締める。 とうとう耐え切れず、デュークはニコルの体の上から退散してしまった。 「ニコルっ 突然何をするんだっ」 少し身を離し、うろたえた眼差しで目の前の少年を見る。 が、そんなデュークの非難の声など聞こえていないように、ニコルは今度はまじまじとデュークの股間を見つめ始めた。 「ニ、ニコルっ どこを見て・・・っ」 慌ててシーツで自分のその部分を隠す。 が、ニコルの視線はなおも隠されたそこに釘付けだった。 その表情が、最初の驚いたものから不安そうなものへと変わっていく。 「・・・・・・・ニ、ニコル・・・?」 その表情に、ただうろたえるばかりだったデュークがやっと、ニコルの異変に気づく。 ニコルは今にも泣き出しそうになっていたのだ。 「ニ、ニコル。 どうした? 何が・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・ない・・・」 「え?」 震える唇が小さく何かを呟く。 何だと問い返したデュークに、ニコルが顔を上げる。 その目には一杯涙が溜まっていた。 「ニコル?」 「・・・・・・だめだよ、デューク様。 僕、出来ない・・・・・・」 「え?」 ふるふると首を振るニコルに、デュークは何がだめなのかわからず、さらに問い返した。 「ニコル? どうしたんだい? 突然・・・・・・何がだめなんだい?」 目に溜まった涙の意味がわからない。 しかしその涙を放っておけず、わからないまま拭おうとする。 しかし、その手はニコルに届く事がなかった。 ニコルがさっと身を避けたのだ。 「ニコル?」 さすがのデュークも、これにはショックを隠せない。 ニコルが・・・・・・ニコルが自分の手を避けた・・・・・・自分に触れられるのを嫌がったのだ・・・っ! 呆然とするデュークに、ニコルがさらに追い討ちをかける。 「だって・・・できない・・・そんな・・・・・・・・・」 こわごわとまたデュークの股間に目を向ける。 「デューク様のそれを、僕のここに入れるんでしょう? 種付けって、そういう意味なんでしょう? だから、デューク様、 僕のここを触ってたんだ・・・・・・」 さも、デュークの手が今にも伸びてくるのではと怖れているかのように、後ろ手に自分のお尻を隠す。 「ニ、ニコル。だからね。 君と私とでは・・・・・・」 ニコルの態度が急に変わった理由を知り、デュークは納得した。 自分の知らない世界を知って、ニコルはショックを受けているのだ。 男同士でこのようなことまでするなど、想像も していなかったのだろう。 そうとわかれば、デュークも落ち込んでなどいられなかった。 何といっても、最愛の妻と愛し合う事が出来るかどうかの瀬戸際なのだ。 これはそんなに怖れるような行為ではない。 男同士でもちゃんとできることなのだし、現に世の中の夫婦は、たとえ 男同士であっても当たり前のように行っている行為だ。 そのことをどうやってもニコルに理解してもらわなければ。 「ニコル。 心配しなくてもいい。 君が怖がることがぜんぜんないんだよ。 これは当たり前のことなんだから。 夫婦なら当然皆やっていることなんだよ」 夫婦、という言葉を強調してみる。 ニコルはこの言葉に弱いはずだ。 今までも奥さん、妻、 夫婦という言葉を使うととても嬉しそうだった。 さっきも、本当に夫婦になろうと言ったら、従順に自分に身を任せようとしたではないか。 今度も必ずそうなると期待していたデュークは、しかしニコルの返事に愕然とすることになる。 ニコルはふるふると激しく首を振ったのだ。 「だって、だって・・・・・・僕、出来ないもん。 そんな・・・そんなのだめだから・・・」 「ニコル。 だから・・・・・・」 大丈夫だと言おうとしたデュークの言葉を、激しく否定する。 そして、デュークに止めを刺す一言を口にしたのだ。 「だって、そんなの僕嫌なのっ! 僕のお尻になんて入らないもんっ そ、そんな、そんな変なもの、僕のお尻に 入れちゃやだ・・・・・っ!」 「っっっ!!!」 その瞬間、デュークはショックのあまり、目の前が真っ暗になるのを感じた。 |