Dear my dearest






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 何故……どうして……どういうこと……?

 ジェンナの頭の中をいくつもの疑問符がぐるぐると回る。

 一体どういうことになっているのか、どうしてそんなとんでもない勘違いをニコルが抱くように

なったのか。

 考えているうちにはたと気づいた。

「……もしかして、ニコルちゃん。 あなたマイラと会ったの? その話もしかして…」

 彼女から聞いたの?

 嫌な予感に襲われながら尋ねると、案の定、ニコルは素直にこくんと頷いた。

「はい。マイラさんが僕に言いました。 デューク様の赤ちゃんがお腹にいるんだって。

だからデューク様の本当の奥さんはマイラさんなんだって。 ……僕は嘘の花嫁なんだって。

そう言いました。僕…僕…デューク様の奥さんじゃないって…側にいれないって……そんなの

やだ……デューク様のこと、本当に好きだから…側にいたいのに……でもデューク様が困る

ようなこと、したくない……僕、そんなことできない……」

 またニコルの目に涙が溢れ出す。

「……デューク様に嫌われるのやだ……デューク様に嫌われちゃったら僕、胸が痛くて痛くて

死んじゃう……う…うぇ……ん…」

 ぼろぼろと涙を零しながらそう訴える。

「ニ、ニコルちゃん。大丈夫よ。デュークがあなたを嫌うはずがないわ。デュークはあなたのこと

とっても好きよ。マイラの言うことなんて、信じてはいけないわ」

 悲しそうに泣き出すニコルにジェンナは慌ててそう慰めた。

 慰めながら、心の中でマイラのことを罵倒する。

 全く、なんてことをしてくれたのだろう……!

 デュークの相手がマイラだとわかった時点で、ジェンナはこの話が全くの偽りであることを

見抜いた。 そう、全てはマイラが仕組んだことなのだと。

 デュークが彼女に手を出すはずがないのだ。 いくら彼女がデュークに言い寄ったとしても、

間違ってもデュークは相手にしない。 手を出すどころかまともに口を利くこともないだろう。 

それほどにデュークは彼女を嫌っている。

 大方、どんなに言い寄っても振り返ろうとしないデュークに痺れを切らしたマイラが一芝居

打ったのだろう。 ニコルとの仲むつまじい噂を聞いて、焦りを覚えたのかもしれない。

 いくら策を弄しても、デュークが彼女を振り返ることなどないというのに。

 己の野望のために自分の父親を騙すようにして結婚し、侯爵夫人という地位を手に入れた

彼女をデュークは決して認めることはないだろう。

 それはデュークの近しい友として側にいた自分が一番よく知っている。

「大丈夫、デュークが奥さんとして認めているのはニコルちゃんだけよ。それは絶対」

「ほ、本当……?」

 ひっく、ひっくとしゃくり上げながら、ニコルは濡れた目でじっとジェンナを見上げた。

 その目にはかすかな希望が宿っていた。

「本当に、僕、デューク様の奥さんでいられるの……? デューク様、僕のこと好きでいてくれる

……?」

「本当よ。マイラなんか、デュークが相手にするものですか。子供が出来たなんて嘘に決まって

いるわ………あら……でも…」

 ふと、ジェンナはあることを思いついた。