温もりの場所

 

 

 

  恭生はふと何か物足りない気がした。

  何だろう、 と首をかしげるが答えは見つからない。

  踊りの稽古の後、 シャワーで汗を流し、 服を着ようとしてその手を止めた。

  まだまだ夏まっさかりでじりじりと暑い中、 ジーンズははきたくないなと思った。

  今日はどこにも行く予定はない。

  少し考え、 恭生はタオルのまま離れの自分の部屋に戻ると、 箪笥から浴衣を取り出した。

  さらりとした綿が素肌に気持ちよかった。

 「ふう……」

  それでもじわじわと暑くなる中で、 恭生はやっと先ほどからの違和感に気付いた。

  ジェフリーがいないのだ。

  いつもなら稽古が終わるとうっとうしいほどにくっついてくるのに、 今日は全然姿を見せない。

 「……どこに行ったんだ。 あいつ。」

  自分の部屋のように入り浸っているここにもいないということは、 どこかに出かけたのだろうか。

  考えて、 恭生はちょっとむっとした。

  出かけるなんて聞いていない。

  自分に黙ってどこに行ったというのだろう。

  自分の知らないところで何を……

  そう考えて、 恭生は自分の考えに赤面した。

  これではジェフリーと変わらない。

  ジェフリーもうるさいほど恭生の行動を知りたがった。

  ちょっとでも黙って外出したり友達を会ったりすると、 後が大変だった。

 「俺って、 もしかしてあいつに毒されてきた……?」

  恭生はうえっと顔をしかめると、 ぶるぶると頭を振った。

  そこで、 ふと思いついた。

 「……そういや、 あいつの部屋って入ったことない。」

  いつもここで昼も夜も過ごすものだから、 ジェフリーにも自分の部屋があるということをすっかり

忘れていた。

 「もしかして……」

  恭生は部屋を出ると、 ジェフリーの部屋のある母屋に向かった。









  こんこん……

  部屋のドアをノックするが、 返事がない。

 「……やっぱり出かけてる…?」

  そう思いながらドアを開き中をそっと覗くと、 途端に冷気が頬を撫でた。

 「うわっ 何だよこの寒い部屋っ」

  中に入ると、 薄い浴衣1枚では鳥肌が立ちそうなほどがんがんにクーラーがかかっている。

  そこで、 ベッドの中でうわがけにくるまりながら気持ち良さそうに眠るジェフリーを見つけた。

 「……何やってんだ、 こいつ。」

  恭生は眠るジェフリーに近寄ると、 ベッドの横に座って寝顔を見た。

  本当に気持ち良さそうに眠っている。

 「ばかか。 こんなに部屋寒くして、 布団にくるまって……」

  呆れたようにつぶやく。

  寒いのなら冷房消せばいいのに……

  恭生はぶるりと体を震わすと、 冷房を消そうとリモコンに手をやった。

  と、 その手が止まる。

  じっとジェフリーを見つめると、 何を思ったのかそっと上掛けをめくってジェフリーの横に

潜り込んだ。

  布団の中はジェフリーの体温に温まってぬくぬくと気持ちいい。

  恭生はそのままジェフリーの胸に寄りかかるようにしてじっと心地よい温もりに浸った。

 「ん………」

  ジェフリーが眠ったまま、 無意識に恭生の体を引き寄せて抱きしめる。

  恭生は一瞬身を固くしたが、 ジェフリーが起きる様子がないのを見ると強張りを解いた。

  じっとしていると、 静かな部屋の中にかすかに冷房のうなる音と、 ジェフリーの寝息だけが

聞こえている。

 「……これも悪くないかも。」

  恭生は気持ち良さそうに笑みを浮かべながらつぶやいた。

  だんだんと瞼が重くなってくる。

  稽古の疲れが恭生を眠りへと誘う。

  恭生はジェフリーの腕の中でゆっくりと眠りに落ちていった。

  やがて、 部屋の中を二人分の寝息が満ちていった。









     60000Hitされた茉里花さまのリクエストです。
     何か暖かい話をということでしたが、 これって暖かいんでしょうか…(暑苦しい気も……)
     この後起きたジェフリーがどういう行動を取ったかはご想像にお任せします。
     (色っぽい浴衣姿だもんな〜恭生。 しかも寝乱れてるだろうし……)
     読みたいって人います?





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