sweet essence

 

   

 



                                
  振り向いた健太の前に、 貢はたった今ラッピングしていた箱を差し出した。

 「はい、これ。」

 「え?」

  突然差し出されたものに、 健太は戸惑った顔をした。

  だってそれは明日のバレンタインの為に誰かが貢達に依頼したもののはずだ。

  それをはい、と出されても、 どうしたらいいのかわからない。

  貢の真意がわからずおそるおそる顔を見上げると、 彼はああ、と健太の戸惑いに気付いた。

 「これは俺の分。 俺が健太君の為に作ったものだから。」

  だから、 はいどうぞ、と再度差し出され、 健太は目をまるく見開いたままそれを受け取る。

  受け取り、 箱を見つめる。

 「本当は明日渡そうかと思ったんだけどね。 この注文品でバタバタするだろうから、 早いけど今日、

渡しておくよ。」

 「明日って……」

  ようやく意味に気付き、 健太は真っ赤になった。

 「でも俺……今日会ったばっかりなのに……」

  そう言いながら、 健太はこんな短時間の間に貢のことを好きになっている自分に気付いた。

 「そう? 俺は前から健太君のこと知ってたよ。」

 「え?」

  貢の言葉に健太はびっくりした。

  だって自分は貢に会った記憶がないのだ。

 「1ヶ月ほど前からかな。 放課後一生懸命トラックを走っているかわいい男の子がやけに気になって

きてね。 ずっと見ているうちにいつのまにか好きになっていたよ。」

  だからこれは最初から君のもの。

  貢はそう笑いながら健太が抱える箱を指差した。

  健太はぱっと顔を明るくすると、 片手に箱を持ったまま貢に飛びついた。

 「俺っ 俺も先輩のこと好きだよっ」

 「嬉しいな、 そう言ってもらえるなんて。」

  貢はにこにこと健太を抱きしめた。

 「あ、 でも俺先輩にチョコ渡せないよ。 今から買いに行って間に合うかな。」

  健太はふと顔を暗くして言った。

 「いいよ。 健太君の気持ちだけで充分。」

  そう言いながら、 貢は何か思いついたようだった。

 「……そうだな、 なら健太君からは別の物をもらおうかな。」

 「別?」

  貢の言葉に健太は首をかしげた。

  何か自分にあげられるようなものがあるだろうか。

  健太には思いつかない。

 「そう、 チョコよりももっといいものだよ。」

  貢はそう言いながら健太の顔を両手で持ち上げると、 すばやく健太の口にちゅっとキスした。

  健太は一瞬きょとんとすると、 次の瞬間真っ赤になった。

 「せっ先輩っ」

 「これは邪魔になるからこっちに置いておこうね。」

  うろたえる健太の手から自分が渡した箱を取り上げると側の台に置く。

  そして、 健太と自分の間に何の邪魔物も無くなったところで、 しっかりと少年を抱きしめた。

  そのままもう一度、 今度は深いキスをしかける。

 「ん……んんっ」

  健太は初めての経験に目を大きく見開いたままだ。

 「健太君、キスの時は目を閉じようね。」

  貢がそれに気付いて、 一旦唇を離すと顔を寄せたまま囁く。

  健太はその言葉に反射的に目をぎゅっと閉じた。

 「いい子だね。」

  貢は素直に目を閉じる健太に優しく笑った。

  が、 次の行動にはさすがの健太も抵抗せずにはいられなかった。

  健太を台の上に押し付けると、 その上にのしかかる。

  そしていきなりシャツをズボンから抜き出すと、 裾から胸の上までたくし上げたのだ。

 「先輩っ 何……っ!?」

  あわてて手でシャツを引き下ろそうとするが易々と片手で止められる。

  貢はあらわになった健太の胸に軽くキスを落とす。

 「ひゃっ!」

  健太はその感触に思わず変な声を上げた。

  くすくす笑いながら貢はさらに健太の胸の上を探検しはじめる。

  自由な片手で片方の胸の飾りをいじりながら、 唇でもう一方をじっくりと攻める。

 「あっあ……あうっ!」

  感じたことのないむずむずするような感覚に戸惑いの声を上げていた健太は、 いきなり胸の中心に

歯を立てられて大きな声を上げた。

  いきなり背筋に電流が走ったようだった。

 「なっ何!?」

 「健太君は感度がいいね。」

  うろたえる健太を見て、 貢は嬉しそうに言った。

  そしてさらに下の方に手を進める。

  ベルトを外して、 ズボンと一緒に一気に下着も下ろしてしまう。

 「うわっ やっやだっ!」

  さすがに身の危険を感じたのか、 健太は貢の手から逃れようともがいたが、 引き下ろされた衣類が

足にからみ思うように動けない。

 「先輩っ 止めようよ。 ねっ」

  必死に貢に訴えるが、 貢はにっこりと笑ったまま取り合ってくれない。

 「だって健太君がバレンタインのチョコの代わりにくれるって言ったんだろう?」

  言ってない!

  自分はチョコを渡せないのが残念だって、 そう言っただけだ。

  自分の都合よく解釈する貢に眩暈が起こしそうになる。

  そうしている間にも貢は着々と自分のやりたいことを進めていた。

  健太の分身を手の中におさめ、 軽くしごく。

 「あ……んっ」

  途端に健太の口から甘い吐息が漏れる。

  健太の体から力が抜ける。

  みるみる固くなっていくものを貢は楽しそうに見つめる。

 「健太君はここも素直だね。」

 「も……言わないで……っ」

  貢の言葉に抗議したくても、 体の一番の弱点を捕られていてはろくに考えることも出来ない。

  あえぎ続ける健太を見ながら、 貢はその顔を健太の下半身にふせた。

 「あああっ!!」

  途端に激しい快感を感じた。

  力の入らない上半身をなんとか少し持ち上げて見ると、 とんでもないこと光景が目に入った。

 「なっ……先輩っ止めてっ離してっっ」

  自分の分身を口に含んでいる貢に、 健太は悲鳴を上げた。

  なんとか離れようと今度こそ死に物狂いで暴れる。

  しかし貢が口に含んだまま根元をぎゅっと強く握り締めると、 あまりの痛さに体が強張った。

  健太の抵抗が止まったのをいいことに、 貢はさらに手と口の動きを早めた。

 「あっあっあ……あああああっっ」

  健太はそのまま追い上げられ、 貢の口の中で果ててしまった。

  放心状態で台の上に横たわる健太を尻目に、 貢は最後まで丁寧に口でぬぐいとる。

 「ご馳走さま、 おいしかったよ。」

  顔を上げてそうにっこりと笑う。

  その時健太は、 貢の後から黒い尻尾が見えているような気がした。






  それから健太は放課後毎日家庭科教室に通うのが日課になった。

  貢は甘いお菓子で健太を誘いながら、 後でしっかりと健太をおいしくいただく。

  そのたびに泣かされることになるのだが、 健太は不思議とそれがいやではなかった。

  結局健太も貢に食べられるのが大好きなのだ。

 「こんにちは〜」

 「いらっしゃい。」

  今日も健太はお菓子を作って待っている貢に会いにいくのだった。





END