密やかな月



                           後編





  アーウィンはエリヤの腰に絡みついたまま残っていた寝着を全て取り去ってしまうと、

もう一度エリヤの分身に指を絡めた。

  達した直後の体はひどく敏感になっていて、 アーウィンの愛撫にすぐに反応する。

 「ああ……あ…んっ んっ」

  エリヤは快感に漏れそうになる声を必死に抑えようと片手で口元を覆っていた。

  もう片手でアーウィンの肩にしがみつく。

  アーウィンは首筋にエリヤの熱い吐息を感じながら、 エリヤの分身を弄んでいた指をさらに

奥に進める。

  そして自分を受け入れてくれるはずの場所にそっと触れた。

 「あっ アーウィン……っ」

  エリヤが感触に気付いて怯えた声を出す。

 「力を抜いて……俺を受け入れてくれるんだろう? エリヤ、 お前の中に入りたい。」

  未知の体験に怯えるエリヤをなだめるように首筋に優しくキスする。

 「いい子だ、 さあ力を抜くんだ。」

  アーウィンの言うとおり、 エリヤが何とか全身の力を抜こうとする。

  エリヤの体から僅かに力が抜けたとき、 アーウィンは先程の行為で濡れた指をそっと奥に

差し入れた。

  そのまま少しづつ中へと潜り込ませる。

 「うっうっうっ……」

  エリヤはアーウィンにしがみつきながら、 体の中に感じるひどい違和感を必死で耐えていた。

  少しづつ、 少しづつアーウィンがエリヤの中に指をなじませるように動いていく。

  根元まで入った指で今度は壁を探るようにする。

 「ひ……いうっ!」 

  ぐるりと中で指を動かされ、 エリヤは反射的に体をすくませた。

 「エリヤ、 力を抜け。」

  アーウィンが心もち余裕のなくなった声でエリヤに囁く。

  エリヤが何とかもう一度体の力を抜くと、 一旦引き抜いた指を2本にして差しこむ。

  「うっ……あ…うっ……」

  ひどくなった異物感にエリヤが苦しそうに喘ぐ。

 「あ……ああっ!」

  その時、 今まで苦しそうだったエリヤの表情が一変した。

 「なっ何? いやっ そこは……!」

 「ここか?」

  エリヤが嬌声を上げた箇所を、 アーウィンが笑みを浮かべてさらにこすり上げる。

 「あああっ いやっ いやっ 止めて……っ 何? 体が……っ」

  今まで感じたことのないほどの快感に、 エリヤは泣きじゃくりながら嬌声をあげ続ける。

  アーウィンは散々エリヤに嬌声をあげさせると、 指を中から引き抜いた。

  そしてエリヤの両足を大きく広げ腰を自分の膝の上に抱え上げるようにすると、 先程から痛いほどに

欲求を訴えて続けている怒張を入り口に押しあてた。

 「ああああっ!」

  力をこめて中に押し入った瞬間、 エリヤの口から悲鳴がほとばしった。

 「いっ 痛いっ あああ……い、いやあ……っ」

 「エリヤっ 力を抜けっ! このままじゃ……っ」

  想像を絶する痛みに逃げようとするエリヤの体を引きとめ、 アーウィンが動きを止める。

  そのまま突き入れてしまいたい衝動を必死に抑えるアーウィンの顎からエリヤの胸へ汗が

滴り落ちる。  

 「エリヤ……いい子だ。 頼むから少し我慢してくれ。」

  止めようにももうアーウィンにそんな余裕はない。

  突っ走ってしまいそうな自分を抑えるだけで精一杯だった。

 「うっ うう……っ」

  そんなアーウィンの様子を見て、 エリヤは怖気づく心を振り絞り、 何とか体から力を抜こうとした。

  大きく息を吸い、 吐く。

  何度か繰り返すうちに、 酷い激痛がほんの少し和らいだ気がした。

  アーウィンもそれを感じ取り、 感謝の気持ちをこめてエリヤの唇にキスを落とした。

  エリヤの両腕が震えながらアーウィンの腕に回される。

  そのまま深く口付けながら、 アーウィンは少しづつ体を進めていった。

  ようやく全てを納めたときには二人とも肩で息をしていた。

 「……大丈夫か?」

  アーウィンが闇雲に動きたい衝動を必死で堪えているために震える手で、 エリヤの顔にかかった

髪をかきあげる。

 「大丈夫……いいから、 アーウィン……動いて、 いい。」

  涙に濡れた顔でエリヤが痛みに堪えながら微笑んだ瞬間、 アーウィンの自制心がはじけ飛んだ。

 「エリヤ……エリヤ……っ」

  激しく動き出す。

  深く突き入れ、 先端まで引きぬいてはまた激しく中を貫く。

 「ああっ ひっ あああっ!」

  あまりの激しさにエリヤはついていけず、 だんだんと意識がかすれていくのが分かった。

 「エリヤ……っ」

  薄れゆく意識の中で、 絶頂に達したアーウィンが自分の名を口にするのを聞く。

  自分の中に放たれた熱い迸りを感じながら、 エリヤは意識を失った。






 
  薄明るくなってきた部屋の中、 エリヤはふと目を覚ました。

  傍らからアーウィンの穏やかな寝息が聞こえる。

  その腕がしっかりと自分を抱きかかえていることに気付いたエリヤは、 嬉しそうな笑みを

浮かべた。

  やっと彼のものになれたのだ。

  体の中が満たされた喜びでいっぱいになる。

  少し身じろいだだけで背筋を走る痛みにさえ甘さを感じる。

  あの後、 気を失ったエリヤが再び目を開けたとき、 心配そうに自分を覗き込むアーウィンの

顔が真っ先に目に入った。

  最後にはエリヤを気遣う余裕を失っていた自分を責めさえした。

 「そんな顔しないでくれ。 やっとお前と一つになれて私はこんなに嬉しいのに。」

  痛みに顔をしかめる自分を辛そうに見るアーウィンに、 エリヤは微笑んで手を差し伸べた。

 「エリヤ……愛してる。 ずっと、 一生この気持ちは変わらない。」

  アーウィンはエリヤを深く抱きしめながらそうつぶやいた。

  あの言葉がエリヤの心の中に暖かく蘇る。

  ずっと愛してる。

  エリヤは眠るアーウィンにそっと囁きかけ、 また眠りへと落ちていった。 

  窓の外には朝の光に消えかけた月がぼんやりと浮かんでいた。



 





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