夜の扉を開いて

 

35

 

 

 

    藤見は呆然としたまま、 荒い息をついていた。

  瀬名生の口の中でイってしまった。

  そのことにショックを隠しきれない。

 「藤見………」

  しかし瀬名生の方が気にもしていない様子だった。

  呆然と横たわる藤見の上にまた体を持ち上げると、 優しく頬にキスをする。

 「…あ………」

  太腿に彼の高ぶりが当たる。

  見上げると、 瀬名生が困ったように藤見を見下ろしていた。

 「……いいか? すまないが俺の方ももう持ちそうにない」

  頬が赤くなるのを感じながら藤見は重く感じる腕を持ち上げ、 瀬名生の首に回した。

 「………優しくしてやろうと思ったんだが・……悪い、 もう限界だ……」

  お前があんまり可愛いすぎて……

  切羽詰った声でそう囁かれ、 藤見は今度こそ首まで真っ赤になった。

  それを隠すように瀬名生の首元に顔を埋める。

  瀬名生はもう一度頬に軽くキスすると大きく広げた藤見の右足を持ち上げ、 入り口に自分の

一物を押し当てる。

  すでに唾液と先走りでびっしょりと濡れているそこに、 ぐいっと押し込んだ。

 「……ああっ!」

  すでに瀬名生を受け入れることに慣れているとはいえ、 いきなり突き入れられると痛みを

感じずにはいられない。

 「はっ…はあっ…」

  息を吐き、 体の力を抜くようにして何とか瀬名生を受け入れる。

 「藤見……大丈夫か?」

  全てを納めた瀬名生が心配そうに藤見を見る。

  それに藤見は額に汗しながらもにっこりと笑って見せた。

  受け入れた直後は苦しかったそれは、 藤見の体が瀬名生を思い出すに従って柔らかく

彼を包み込むようなものに変わっていく。

  それとともに、 体の中を疼きのようなものが沸き起こってくる。

  体はこの後の目も眩むような快楽を知っているのだ。

  期待にそこが瀬名生を締めつける。

  「……っ!」

  きつく締めつけられ瀬名生は息を飲むと、 藤見の体をその両腕で抱きしめた。

 「藤見……っ」

  始まる律動。

  藤見は瀬名生にしがみついてそれを受け止めた。

  突き入れられるたびに下肢から脳まで快感が突き抜ける。

 「あっ…ああっ…」

  中を抉るように貫かれ、 思わず藤見の口から高い嬌声が出る。

  もう快感以外何も考えられなかった。

  全身で自分に与えられる快感を追う。

 「……あ…っああっ す、き……っ 好き……っ」

  藤見の口から言葉が漏れる。

  その言葉に瀬名生ははっとした。

  脳裏によみがえる何かがある。

  以前もこんな言葉を聞かなかったか?

 「せ、 瀬名生……先生……先生……っ」

  しかしそれはすぐにまたどこかに行ってしまった。

 「先生……っ」

  藤見の口から悲鳴のような嬌声が上がる。

 「貴士だ……貴士と呼んでくれ」

  そう囁くと首に回された両腕に力がこもった。

  激しく突き上げられて藤見の体がのけぞる。

 「た、 た…かし……貴士…さん……っ」

  うわごとのように名を呼ばれ、 瀬名生は自分の体がますます熱くなるのを覚えた。

 「藤見……藤見・……っ」

  夢中で突き上げる。

  もう絶頂はすぐそこだった。

 「あああっ もうっ!」

  藤見の口からも悲鳴が上がる。

 「藤見……っ!」

 「あああああっ!」

  ほとんど同時に絶頂に達する。

  藤見と瀬名生の腹の間が藤見の放ったもので濡れていく。

  瀬名生は藤見の奥深くに熱い迸りを放っていた。









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