夜の扉を開いて

 

 

 

    薄暗い部屋の中を熱い吐息が満たしていく。

 「かわいいよ。 ほら、 こっち向いて。」

 「あ……っ」

  芳瑠(かおる)は肌をなぞる指先にあえかな息を漏らした。

  その指先は時々からかうような動きで芳瑠を翻弄しながらも、 彼の熱をあげていく。

  弱い場所を暴かれるたびに芳瑠の体がびくりと跳ねあがる。

 「あっ あ……っ」

  闇の中にぼんやりと浮き上がる白い裸体は、 体の上を這いまわる手に大きく

その背をしならせる。

 「い……や、 あ、 あ、 ああっ だめっ」

  突然大きく両足を広げられ、 驚いた芳瑠は慌てて足を閉じようとしたが、 すぐさま

間に入ってきた体にその行動を遮られた。

 「いい子だからおとなしくして。 君の綺麗な体俺に見せて。」

  足の間に身を落ち着けた男は、 羞恥に体を縮める芳瑠の耳元で甘く囁いた。

  その言葉に強張った体から少し力が抜ける。

 「……先輩……」

  芳瑠は震える腕を自分にのしかかる男の背にそっと回した。

 「ほんと、 かわいいよ。」

  男は芳瑠の仕種に笑みを浮かべながら、 芳瑠の腰の奥に潜む蕾に手を伸ばした。

 「あ……っ」

  奥に触れてくる感触に芳瑠の腕に緊張が走る。

  しかし男は気にする様子もなく、 入り口をぐるりと指でなぞると、 まだ固く閉ざした

状態を確かめる。

  そしていったん指を外すと、 自分の口に含み丹念に濡らした。

  もう一度その指を奥に忍ばす。

  今度は濡れた指先をそのまま少し含ませる。

 「ああっ」

  途端、 芳瑠の体が大きく跳ねた。

  逃れようとする体をもう片方の腕でしっかりと抑え、 男はさらに指を深く潜りこませていく。

 「あっ、あっ、 ああっ、い……たい……っ」

 「大丈夫だから。 力を抜いて。」

  怯える芳瑠をなだめながら、 男は奥まで指を突き入れ中を探り出す。

 「うっ、うっ、うっ」

  芳瑠は初めて味わう痛みと違和感に嗚咽を漏らす。

  それでもいやだとは言わなかった。

  長い間想っていた相手がやっと自分を見てくれたのだ。

  男が自分に欲情していることが嬉しかった。

  「あっ、ああ……っ」

  男の指が二本、三本と増えていく。

  それとともに増す圧迫感と痛みが芳瑠に小さな悲鳴を上げさせる。

  くちゅり、と音をたてて芳瑠の中から圧迫感が消えていく。

  男の首元に顔を埋めて痛みに耐えていた芳瑠は、 ほっと息をついて顔を上げた。

  と、 次の瞬間、 激痛が体を襲った。

 「ああああああっっ!」

  男は身をのけぞらせる芳瑠の腰を両手で掴むと、 一気に肉杭を押し込んできた。

 「〜〜っ!!!」

  あまりの激痛に芳瑠は声の無い悲鳴を上げる。

  見開いた目から涙が溢れ出す。

  だが男はそのままズッズッと激しく腰を突き上げてきた。

  抵抗することも出来ず、 芳瑠はただ体を揺さぶられるままだった。

  のしかかる男の体が動くたびに下半身を切り裂かれるような鋭い痛みが襲う。

 「うっ……うっ……あ……い、や…あ」

  あふれる涙がこめかみを伝ってシーツを濡らす。

 「ああ……イイ。 すごい、 締めつけてくる……」

  芳瑠の苦痛に気付かないのか、 男は恍惚とした顔で快感を貪っている。

 「すごい、 こんなイイの初めて。」

  リズミカルに腰を突き上げながら、 男は芳瑠の首筋や胸元にキスを落とす。

 「いた、あ……っ、 せ…んぱい、 もっとゆ……く、り…っ」

  あまりの痛みに芳瑠は泣きじゃくりながら懇願する。

  その言葉が届いたのか、 男の手が芳瑠の分身に絡みついた。

 「……あ…っ」

  快感の源を押さえられ、 やわやわと扱かれる。

  痛みのショックで小さくなっていた分身がゆっくりと首をもたげてきた。

  それとともに後ろの痛みが少し和らいだように感じる。

 「あ…あ…ああ……」

  前を弄られて芳瑠の中に小さな快感の火が点る。

  まだまだ痛みの方が大きかったが、 それでも先ほどまでの絶えられないほどの激痛は

薄らいだように感じる。

  気持ちに少し余裕ができ、 芳瑠は今自分が愛しい男に抱かれているのだと実感した。

  途端、 自分を苛むこの痛みさえ愛しいものに思えてくる。

 「せ…んぱい、 先輩……っ」

  男の背に回した腕に力をこめる。

  応えるように男が芳瑠に口付けてきた。

  深く口内をまさぐられる。

  男の口からはきついアルコールの匂いがした。

  息まで奪うような激しい口付けに必死に応えながら、 自分を苛む痛みに耐える。

 「……っ あっ、あっ、あ……す、き……好き…っ」

  芳瑠の口から想いがこぼれ出す。

  絶頂が近づいてきたのか、 男の動きが速く激しくなってくる。

  中を掻きまわすように抉られ、 奥の奥まで貫かれる。

 「ああ……君最高だよ……はあっ、はあっ」

  腰を叩きつけるように突き上げながら、 男がうっとりとつぶやく。

 「ああっ、ああっ、好きっ せ、先輩っ 瀬名生先輩……っ」

  がくがくと体を揺さぶられ意識を朦朧とさせながら、 芳瑠は自分を抱く愛しい男の名を

呼び続けた。







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