第二夜

ジェフリー x 恭生

 

 

 

 

   「………ん?」

  恭生は何か妙な気配を感じて目を覚ました。

 何だと思ってベッドの上に身を起こす。 と、足元でごそごそと動く影が目に入った。

 「……っ!」

  泥棒か!と思った恭生はとっさに布団をはねのけて枕を投げつけていた。

 「このコソ泥野郎!」

 「…っ! うわ…っぷっ きょ、恭生! 違う! 俺だ!」

 「え?」

  枕を投げつけた後、 掛け布団をバサリと人影に投げかけ飛びかかった恭生は、

下から聞こえてきた聞き覚えのある声に殴ろうとした手を止めた。

 「その声…………ジェフリー?」

  ごそごそと布団の中から這い出してきたのは、自分の恋人のジェフリーだった。

 「…………お前、こんなところで何している?」

 「何って……恭生の顔を見にきたに決まってるじゃないか」

 「……今は真夜中だぞ」

 「だから夜・這・い、だろう」

 「…………」

  妙な節をつけて楽しそうに言う男を、 恭生は冷ややかな目で見た。

 「どうやって入った? 鍵はかかっていたはずだ」

 「窓が開いていたぞ」

 「…………」

  悪びれなくそういうジェフリーに、恭生は眩暈を起こしそうだった。

  ふつふつと怒りが湧き起こってくる。

 「……さっさと出て行け」

 「え―――っ 一緒に寝ようv そのためにわざわざこんなものまで用意して

きたんだぞ」

  そう言って差し出されたものを見て、恭生はまた眩暈を起こしそうになる。

 「……それは何だ? まさかと思うがそれで一体何をしようと?」

 「決まってるじゃないか。俺達のラブライフを楽しむための大切なアイテムだろう」

  ワクワクといった期待顔で出されたのは、媚薬入りラブローション(しかも香付き)

男性器を象ったバイブ(……しかもリモコン付き)などといった、俗に言う大人の

おもちゃだった。 一緒にある妙な大きさの金属のリングや革ベルトが何のため

のものかなど、訊ねるのも怖い。

 「……こんなもの、一体どこで………」

  怒りと羞恥に震えながら、それでもまだ何とか理性を保った声で訊ねる。

 「何かの雑誌に載っていたんだ。恋人を飽きさせないために絶対必要なもの

らしいぞ。………今の俺達にはまだ必要じゃあないとは思ったが、なんだか

楽しそうだったから。 わざわざ新宿まで行って雑誌に載っていた店で買って

来たんだぞ」

 「〜〜っ! 捨てろっ 今すぐ捨てろ! そんなもの!」

 「え〜 そんな、 もったいない」

 「捨てろ――っ!!」

  そう怒鳴った恭生は、 真っ赤になりながら強引にジェフリーの手から見るも

おぞましい品物を奪い取ると、窓からバラバラと投げ捨てた。

 「あああっ! せっかくのものが……っ!」

  ジェフリーが残念そうに声を上げる。

 「うるさい! お前もさっさと出ていけっ!」

  窓の外を未練がましげに見る男を激怒した恭生が力任せに部屋のドアから

追い出す。

 「恭生! それはないだろう。 中に入れてくれ。一緒に……」

  しっかりと鍵を閉めたドアの向こうから情けなさそうなジェフリーの声が聞こえる。

 「うるさいうるさいうるさい!! さっさと自分の部屋で寝ろ!!」

  恭生はそう怒鳴り返しながら、こんどは窓の鍵もしっかりと閉める。

 「恭生〜……」

  ドアの外からはまだジェフリーの情けない声が聞こえてくる。

  恭生は頭から布団をかぶってその声を無視した。

 「あのエロ野郎………ったく何考えてんだ……っ」

  怒りにすっかり目が覚めてしまった

  それがさらに恭生の怒りをあおる。

 「今度ばっかりはそう簡単に許してやらないからな……っ」

  そう心に固く誓う。

  それからしばらくジェフリーは恭生に口を利くどころか、視線も合わせて

もらえなかった。

 





  翌日、 庭を歩いていた優生が窓の外に捨てられたそれらを見つけてしまい、

真っ赤になって固まっていたことは誰も知らない。





END




………すみませんすみません、石投げないでください〜(逃 )







Treasurehunt topへ