昼下がり

 

 

 

 

   「へえ………」

  届けられた手紙を読んでいたアーウィンが、 何やらニヤニヤと意味ありげに笑った。

 「アーウィン?」

  側で書類に目を通していたエリヤがそれを見咎める。

 「何か楽しいことでも?」

 「ああ………エリヤも知っているだろう、 デュークを」

 「デューク………クレオール公爵のことか?」

 「そう、 その公爵様だ。 昔からの友人なんだが………このたび結婚が決まったらしい。 というか、

本人の知らぬ間に決められたらしいな。 国王も承認済みだ」

 「それは………それでその手紙は式の招待状か?」

 「いや、 式は後日執り行うそうだ。 とりあえず花嫁が先に公爵家に輿入れするらしい」

 「………変わった結婚だな。 クレオール家のような名家ともなれば盛大な式を行なうのが

普通だろう?」

 「まあそうだが………あのデュークだからな」

  アーウィンは悪友の顔を思い出す。 昔から何かと言えば彼と数人の友人達と共に遊び騒いだ

ものだ。 酒も女も、 彼から学んだようなものだった。

  今も変わらず女性遍歴を繰り返すデュークの噂話は宮廷で絶えない。

  その甘く整った端正な容姿は貴婦人達の間で絶大の人気を誇っていた。

  その彼が………

  アーウィンの顔からニヤニヤ笑いが消えない。

 「これで奴も年貢の納め時ってことかな。 ………俺がエリヤと一緒になったときは散々からかって

くれたものだが、 今度はこちらの番だな」

 「お相手はどちらの令嬢なんだ?」

  椅子に座るアーウィンの背後からエリヤがするりと腕をからめ、 手紙を覗きこもうとする。

 「ベレー伯爵の令嬢らしいが………エリヤ、 知っているか?」

 「ベレー………名家だな。 でもあちらに年頃の令嬢などいらしただろうか」

  記憶を探って、 はて?と首を傾げる。

 「まあいいさ。 そのうちご尊顔を拝見しに行くとしよう………いいからかいの種にもなる」

 「………悪い人だな」

  悪友の一生の一大事を楽しそうに笑うアーウィンに、 エリヤがたしなめるように言う。

 「いいじゃないか。 あのデュークが結婚だぞ? 宮廷のご婦人方の嘆きようが目に浮かぶようだ。

…………しかしこんな結婚くらいで諦めるような方々ではないだろうがな」

 「アーウィン」

  宮廷の悪習を取り上げ、 なおも面白そうに話すアーウィンの口をエリヤが手で塞ぐ。

 「そのようなことを言ったら、 お相手の花嫁に失礼だろう。 ………デューク殿も花嫁を迎えられて

幸せになられることを祈るのが友人の務めじゃないか」

 「俺達のように?」

  手を外したアーウィンが背後のエリヤの顔を引き寄せる。

 「…………そう、私達のように……」

  ちょんとキスをされて、 エリヤがにっこりと微笑む。

  そのまま前に引き寄せられ、 アーウィンの膝の上に横座りする形になる。

 「アーウィン、 誰かが入ってきたら………」

  ブラウスの裾から潜りこんできた手に、 エリヤは人目を気にする。

 「人払いしている、 誰も来やしないさ………新婚の俺達を邪魔するような無粋な者はな」

 「まだ書類を読んでいる途中………っ!」

  はだけられた胸元に熱く口付けされて言葉が途切れる。

 「後でいいだろう………ずっと後で」

  悪戯っぽくそう言うと、 アーウィンは手早くエリヤの上半身をあらわにした。

  現われた白い肌には昨夜の行為の跡が色濃く残っている。

  自分がつけたいくつもの赤い印にアーウィンは満足そうに目を細める。

  そしてその印を確かめるように指を這わせる。

 「あ……んっ」

  胸の突起をペロリと嘗められ、 エリヤの口から吐息が漏れる。

 「エリヤ……」

  アーウィンはエリヤの下肢からも衣服を剥ぎ取ると、 体の位置を変えて自分と向き合うように

膝の上にまたがらせる。

 「アーウィン……」

  恥ずかしそうにしながらも、 エリヤは胸元に来たアーウィンの頭を愛おしそうにその両腕で

抱え込んだ。

 「エリヤ…愛してる」

  そうつぶやきながら、 アーウィンは手を下方に滑らせて昨夜自分を受け入れた場所が名残を

残して熱く潤っていることを確かめた。

  手早く自分の下肢をくつろげ、 そのまま中へと侵入する。

 「っ!」

  いきなり潜りこんできた熱塊を、 エリヤは身をのけぞらせて受け止めた。

  一瞬感じた痛みはすぐに充足感に変わった。

 「ああ……アーウィン…」

  恋人の頭を抱え込んだ腕の力が強まる。

  耳もとに熱い息を感じながら、 アーウィンは内部の心地よい感触を確かめるように一度軽く腰を

突き上げた。

 「っん!」

  背筋を駆け上る快感にエリヤの顔が歪む。

  アーウィンを包み込む内部がキュウッと彼を締めつける。

  たまらずアーウィンは腰の突き上げを始めた。

 「あっ、あっ、 ああ…んっ!」

 「エリヤ……エリヤ……」

  嬌声を上げるエリヤを愛おしそうに見上げながら、 アーウィンはさらに恋人の嬌態を引き出そう

と愛撫の手を伸ばす。

  二人の体の間で勃ち上がり揺れているエリヤの分身を捕らえ、 くいくいっと扱く。

 「あああっ!」

  途端にエリヤの口から一際高い嬌声が上がった。

  前と後ろからの刺激にエリヤの体が一気に高まる。

 「…うっ!」

  激しく蠕動する内壁にたまらずアーウィンも呻き声を漏らす。

  そのまま最後まで突き進もうとばかりにアーウィンは動きを早めていった。

 「あっ…あっ…ア…アーウィン……っ」

 「………くっ!」

  ほとんど同時に二人に最後が訪れる。

  目も眩むほどの絶頂にエリヤは身をのけぞらせて唇をわななかせる。

 「ああ………」

  熱い迸りがビクビクと震える内壁に打ちつけられるのを感じ、 さらにまた小さく身を震わす。

 「………エリヤ」

  ほおっと息をついたアーウィンがエリヤの顔中にキスの雨を降らす。

  それをうっとりと受け止めながら、 エリヤは体中で幸せを感じていた。

  結婚後のアーウィンはこれ以上ない程に優しかった。

  優しいだけではなく、 時には今みたいに激しく自分を求め、 そして自分を心の内をぶつけてくれる。

  体だけではなく、 心も揺るぎない愛情で繋がっていることをはっきりと感じる。

  ふと、 先ほどの話を思い出す。

  彼らも………

 「エリヤ?」

  ぼんやりと胸にもたれこんだままのエリヤを気遣ってアーウィンが声をかける。

 「………幸せになるといいな」

 「え?」

  小さくつぶやかれた声にアーウィンが何だと聞き返す。

 「デューク殿も……花嫁も、 私達のように幸せになればいいな」

  その言葉にアーウィンもふっと微笑む。

 「………そうだな……」

 昼下がりの心地よい風が窓のカーテンを揺らしていた。







  …………その数日後、 アーウィンはデュークから結婚認可の取り下げというとんでもない願いを

聞くことになった。

  そしてそれからしばらく彼らに振り回されることになろうとは、 このときは予想にもしていなかった。








                        END






     202020を踏まれたみやびさまのリクエストで「冬の瞳」の二人のラブラブなお話です。
   5年後くらいの慣れた頃の……とおっしゃられていましたが、 すみません(汗)
   1年後あたりになってしまいました。おまけに「Dear〜」の話と時期がリンクしています。
   まあ、アーウィンとエリヤの側からのお話、ということで………おそまつでした。









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