冬の瞳

 

14

 

 
 
  永遠に続くかと思われた責め苦は、 動きが激しくなっていくアーウィンがひときわ乱暴に突き上げた

時に終わりを告げた。

 「……くっ」

  エリヤの体の上で身を震わせたアーウィンがその動きを止める。

  エリヤは自分の中に熱いものが放たれるのをぼんやりと感じていた。

  アーウィンがずるりとエリヤの中から自分を引き抜く。

  ああ、終わったのだ。

  そうほっとしたのもつかの間、 アーウィンはそのままエリヤの身体をうつぶせにひっくり返し、

腰を持ち上げるようにすると腹の下に枕を押し込む。

  エリヤの全てがアーウィンの目の前に晒された。

 「いっ嫌っ 見るなっ お願いだアーウィン やめて……っ」

  力の出ない身体で必死に姿勢を変えようとする。

 「っ!」

  思わず息を飲んだ。

  たった今まで蹂躙されていた場所に、 指を差しこまれたのだ。

  血と白濁に汚れた奥は、 まだ少し緩んだままで指の一本程度は抵抗なく受け入れていく。

 「も……うやめて……お願いだ……」

  エリヤはシーツに顔を埋めながら涙を流して懇願した。

  しかしアーウィンはそんなエリヤの願いを聞き入れることなく、 差し入れた指で中を探り出す。

 「うっ……うっ……」

  初めは体を震わせながら中を探られる気持ちの悪さに耐えていたエリヤだったが、 だんだんと

じんわりとした快感が沸き起こってくるのが分かった。

  エリヤに抱かれる歓びを教えたのはアーウィンだった。

  恋人になった最初の頃に、 優しくエリヤを歓びに導いてくれた。

  それから何度も何度も……。

  1年以上、 抱かれていない体はその感覚を忘れかけていたが、 同じ愛しい人の手があの

歓びの記憶を揺り起こしていく。

 「あ……ああ……ん……」

  徐々にエリヤのうめき声が喘ぎ声に変化していく。

  アーウィンはその声の変化を聞き取ると、 前にも手を伸ばし前後で快感を与えていった。

 「あああっ」

  突然身体の内を走った電流のような鋭い快感に、 エリヤは身をのけぞらせた。

  アーウィンの指がエリヤの体の中の弱い部分をこすり上げたのだ。

 「ああっ いやっ アーウィンそこはっ あ……っひっ」

  エリヤの嬌声を聞いたアーウィンが、 集中的にそこを責め始める。

  エリヤの腰がそれにあわせるように揺れる。

 「あ……あっ あっ も……う、 もうだめ だめだ お願いだ ア、 アーウィン……っ」

  体の中を満たされない飢えが、 エリヤに懇願させる。

  アーウィンの体で自分をいっぱいにして欲しかった。

 「アーウィン……っ」

  涙混じりの目で背後のアーウィンを見る。

  その顔に、 それまで無言でエリヤを責めつづけていたアーウィンが口を開いた。

 「欲しいか? 欲しいなら俺を誘ってみろ。 いつもやっているみたいに、 男を誘うときのように

俺を誘えよ。」

  その言葉にエリヤは水をかぶせられたような気になった。

  「そんな……」

  顔を強張らせるエリヤに、 アーウィンはさあ、 というように手の動きを強める。

 「ああっ」

  途端に少し遠のいていた快感が一気に戻ってくる。

  容赦なく責めてくるアーウィンの手の動きがエリヤを翻弄する。

 「さあ、 どうして欲しいんだ。 言えよ。」

 「あ…あ……」

  言葉を促がすアーウィンに、 エリヤは快感に流されそうになりながらも必死に首を振る。

  アーウィンはちっと舌打ちするとさらに激しく責めたてる。

  背中に顔を落とすと背筋に沿って舌を走らせ、 そのまま首筋を舐め上げる。

  耳の中をねっとりと舐められ、 耳たぶをかりっと噛まれた。

 「あああっ」

  途端にエリヤの背を鋭い快感が走り、 そのまま一気に絶頂に達しそうになった。

  しかしアーウィンの手がそれを許さない。

 「いやっ もう……もういかせて……」

 「なら、 言う言葉があるだろう。 どうして欲しい?」

  情け容赦ないアーウィンの言葉に、 ついにエリヤは諦めたように目を閉じた。

  そして震える手を背後のアーウィンに伸ばし、 彼の分身に触れる。

 「お……お願いだ……これを……私…の中に……」

 「これが欲しいのか?」

 「……欲しい…」

  その言葉を聞くと、 アーウィンは皮肉気に口元をゆがめた。

  体勢を立て直してエリヤの後ろに自分を押しあてる。

  そして、 震えるエリヤの背中を押さえるようにして自分を埋め込んでいった。

 「うっうっ……あああ……」

  エリヤは目を閉じて自分の中に入ってくるものを受けとめた。

  全てを中に納めると、 アーウィンは体を起こしエリヤの腰を両手で掴んだ。

  そして腰だけを引き寄せるようにすると、 ゆっくりと動き出した。

  「ああ……ああ……あ……ん」

  エリヤの唇から喘ぎ声が漏れ出す。

  体の中をアーウィンが動くたびに、 頭の芯までしびれるような快感が走る。

  知らずエリヤはねだるように腰を動かしていた。

  それを見て取ったアーウィンの目に蔑みの表情が浮かぶ。

 一転して荒々しい動きでエリヤを突き上げ始めた。

 「あああっ」

  たまらずエリヤは高い嬌声をあげた。

  そのまま絶頂への階を一気に駆け登る。

 「あ……アーウィン…っ」

  絶頂に達したエリヤの口から思わずアーウィンの名が出た。

  それを聞いたアーウィンは顔をゆがめると、 おもむろにエリヤから己を引き抜く。

  そしてぐったりと横たわるエリヤの背に快感の証をほとばしらせた。

 





  事が終わると、 疲れ果て指先一つ動かすことの出来ないエリヤを尻目に、 アーウィンは

さっさとベッドから降りた。

  全裸のエリヤに対し、 アーウィンはほとんど衣服を乱してもいない。

  軽く着衣を整えると眼下のエリヤを冷ややかに見下ろし、 一言言い捨てた。

 「淫乱。」

  そのままもう後は振りかえりもせず、 部屋から出ていった。

  一人残されたエリヤは血と白濁に塗れて横たわったまま静かに涙を流した。



 







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